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多言語と多様性が創造力を高める


2024.12.8


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 先週のコラムでも書いたが、今年(2024年)の11月にサンフランシスコとシリコンバレーの企業や自治体を訪問し、先端的な技術の開発と適用について情報収集してきた。技術的な面については、特に驚くような内容が示されたというものではなかった。20年以上前に米国に出張したときに感じた「米国の情報技術はかなり日本の先を行っている」という感覚は全く無く、想像通りだった。しかし、技術面以外では様々な発見があった。

 きっかけは、小学校低学年の孫からぶつけられた質問だった。「おばあちゃんはアメリカに何をしに行ったのか。おばあちゃんは英語がしゃべれるのか。あっという間に帰って来たけど目的は果たせたのか」。確かに、子供から見れば遠いアメリカに行くのにたった3泊5日の旅は短いと感じられるだろう。実際10か所の企業と組織のプレゼンテーションを受けて質疑応答をした。それには英語がかなりしゃべれることは必須だと思っても当然だ。でも、思い起こせば、この間、私が英語をしゃべることは殆ど無かった。

 孫の疑問に対しては、まず、世界地図で日本とサンフランシスコの位置を示して、たった9時間で行けると伝えた。英語については、優秀な通訳さんがついただけでなく、訪問企業の中に日本語の達者な人がいてプレゼンテーションと質疑応答に対応してくれたこともあった。さらに、自動翻訳で英語のプレゼンテーションと質疑応答内容が日本語で表示される仕組みもあった。そのために、短時間で情報交換ができたのである。

 孫の質問をきっかけに、もう一つ重要なことを思い出した。シリコンバレーの中心にあるサンノゼ市の市庁舎を訪れたとき、サンノゼ市についての説明が最初にされた。人口は100万人、そのうちの1/3がアジア系、1/3がヒスパニック系、1/3が白人。60%の人が多言語をしゃべる。40%は海外出身者である。高収入の人が多い。多分、シリコンバレーの企業で働く高収入の技術者が多いからだろう。ここから見えてくるのは、シリコンバレーが多くの先端的な技術を創造し世界に送り出してきた要因として「多様性」があるということである。さらには、多言語をしゃべる人が多いということが、創造性の拡大に言語コミュニケーションが重要であることを示唆しているように思える。

 もう一つの重要な発見は、訪問した多くの企業が人材を非常に重要視しているということである。特にAIの技術者の獲得と定着化には力を入れているようだった。ここでも技術者同士のコミュニケーションが重要な役割を持っていた。食事がいつでも食べられる環境を作り、食事をしながら、コーヒーを飲みながら情報交換やディスカッションできる快適な場所が用意されているのは、創造性を高めるのに有効であると確信が持てた。

 話は変わるが、海外から日本に様々な食材が入ってきている。最初に出会ったときにはどのように食べられているかを調べてその通り試してみるかもしれない。やがて、日本の食文化と融合した新しい食べ方を工夫するようになる。例えば、クッキング・サイトでは生春巻きで使うライスペーパーを使った料理やお菓子などが多く紹介されている。食材の多様性は新たな食文化を創造している。自国の食材にこだわる必要などない。

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