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入学時期を9月にする前にすべきこと


2020.06.07


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 私が非常勤講師をしている大学の全授業がオンラインになってから1か月経った。幸い順調に進んでいる。しかし、新たな不安が出てきた。「来年の授業をどうしよう」ということである。はっきり言ってしまえば、「私の授業は教室で集まってする必要などなかったのではないか」と気づき、「今後もオンラインでの授業を続けたい」と強く思うようになったということである。その理由はコラム『オンライン化で明らかになったこと』で書いた。

 コロナ禍の中で、大学の授業を除いて私が最も心を乱す要因になったのは、「9月入学」提案だった。大学だけの話だったらそれほど気にしなかったかもしれない。しかし、小学校からとなると話は別である。私の孫の一人が来年4月に小学校入学予定だから気になってしかたがない。9月入学となれば孫は入学時に既に7歳である。ゼロ歳から保育園に通い、公立小学校入学予定で塾もお稽古事も何もしていない孫にとっては義務教育だけが勉強の命綱なのに、7歳過ぎまでその機会が与えられないなんて酷いではないか。世界には5歳から義務教育が始まる国だってあると言うのに、これでは世界に後れをとってしまう。

 9月入学は来年度まで行わないことが明らかになったのでひとまずほっとしている。落ち着いて考えてみれば、いずれは9月入学に移行せざるを得ないだろう。そのときは、5歳での小学校入学を強く望む。それがグローバルに活躍できる人材育成にとって必須であることは多分、有識者の間では了解事項ではないだろうか。もちろん、学校の現場では様々な問題が生ずるはずである。その解決のために必要なのは『教育のIT化』ではないだろうか。

 オンラインの授業で分かったのは、基礎的な教育や演習は教室に集まって行わなくともデジタルな教材を使ったオンデマンド授業で十分実施できるということである。私の場合はむしろオンラインの方が受講率もレポートの質も格段に高かった。さらには、通常授業の半分をオンラインに変えられたら、教室の密は二分の一になり、先生方の負担はかなり減らせるはずである。

 オンライン化の大きな課題は、家庭での学習環境の整備に大きな差が出ることだろう。全ての家庭にパソコンがあり、高速ネット環境が整っているわけではない。(私の孫のように)母親が家にいない家庭も多い。児童生徒が自宅でオンライン学習するのには大変な困難が生ずる。「サテライト教室」を設置すべきだろう。パソコンが借りられてネットワークが使える場所である。給食も(弁当にして)そこに運んでもらう。勉強の進捗状況はクラウドに保存し、担任の先生がチェックして登校日に指導すればよい。スタッフは勉強を教える必要はなく、パソコンとネットワークの利用の世話とメンテナンスができればよい。

 今回の新型コロナウィルス禍で、日本のIT化の遅れが明らかになった。解決のために最優先で行うべきは教育現場のIT化である。早い段階からITに慣れ親しむことで将来グローバルに活躍できるIT人材の育成が可能になる。

 最後にもう一つ。5歳からの義務教育開始に加えて、飛び級を柔軟に行ってはどうか。優秀な人材が20歳代になるまで学校に縛り付けられる必要などないはずだ。



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