新型コロナウィルス感染第2波に向けて、生活パターンを変えていく必要が生じている。私自身のコロナによる大きな変化は、非常勤講師をしている大学での講義が全てオンラインで行われるようになったことだろう。その指示が大学から来たのは4月の半ばである。準備期間は3週間だった。最初に大学から連絡があってすぐ、私の頭の中で湧いたオンライン授業のイメージは、過去の仕事のコンピュータ化、ネットワーク化の初期に生じた様々なトラブルと結びついていた。怖がりの私の「もしも○○が起こったらどうしよう」の集合体みたいなものである。その結果、即座に「Zoomを使ったリアルタイム講義は避ける。音声付きの講義資料の視聴とレポート提出によるオンデマンド講義にする」ことを決めた。さらに、講義資料はムービーではなくパワーポイントの音声付きスライドショーにすることでサイズを十分の一にし、データ通信量の削減を図った。その結果、5月の連休明けに始まったオンライン講義ではトラブルなく4週目を迎えた。
この講義は15年目になる。昨年までは、講義の途中で課題を出し、解答を手書きで記述させて提出してもらい、それに基づいて出席者数を把握していた。残念ながら殆ど白紙で出す学生も見受けられた。(別のことをしていたのか、居眠りしていたのか)。今年は、毎回の課題の解答レポートをWordで作成し、大学の授業用のシステムを使って提出させる形をとっている。授業の出席は資料のアクセスではなくレポートの提出を持って確定させる。
その結果はちょっと驚くものだった。受講登録者数は昨年の1.7倍である。オンデマンドなので気軽に登録したのかもしれない。しかし、今年のレポート提出数は昨年の2倍以上ある。出席率も高くなっているということである。何より、レポートに書かれた内容が例年とは違ってかなり充実している。それを読むことで私自身の新たな発見があり、その内容を整理して新しい資料を作り、次の講義の資料に加えるのに4時間から6時間は要する。
これまで毎日行ってきた、講義に出る、会社に出社することは、それだけで何か仕事をしたような気分になる。通学、通勤に時間が取られれば、その気持ちは強くなるだろう。授業が終われば次のことに気持ちは移り、復習する気持ちは薄れる。でも、オンデマンド講義の場合、勉強した結果を表現して伝えなければ授業を受けたことにはならない。そのためには復習しながら考えて書かなければならない。結果として内容は充実する。では受講率が上がったのはなぜか。それはオンデマンドなので深夜など自分の都合の良い時間に勉強できる、遅刻で受けられないということがない、という理由だろう。働き方、学び方の改革にぜひ生かしていくべき貴重な発見だろう。
ところで、様々な問題が暴露してしまった「マイナンバーカードを使ったオンライン申請」の問題はどこにあるのか。これはまさに、政府、自治体、行政機関の無計画なデジタル化、オンライン化の結果だろう。システム同士がつながっておらず、あるところからは人手で目視作業、プリントして確認、などなど。FAXでデータ収集なんていうのもあった。全くIT立国なんてどこの話か。IT業界に50年近くいた私にも責任の一端はあるのだろうが。
自分の信念に従って行動する「高い志を持つ、市場価値の高い技術者」を育成します。
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コンサルティングと研修のサービスを提供します。
所長:石田厚子 技術士(情報工学部門)博士(工学)
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オンライン化で明らかになったこと
2020.05.31