4年ほど前になるが、突然声が出なくなった。風邪を引いたわけでもないのに一体なぜなのか。大学の教員にとって「声」は最も重要な道具である。その道具を失ったら一体どうすればよいのか。少々大げさに聞こえるかもしれないが、それくらいの衝撃だった。ちょうど中間試験の時期だったので、復習のための演習や試験で声を使わなくとも済むようにし、授業のない日に医者に行くことにした。大学の最寄り駅からスマホで医院を検索した。場所を地図で見ると意外に近い。これなら歩いても行けそうだと思ったが、迷うといけないので駅前でタクシーに乗った。メモ用紙に医院名を書いて見せるとすぐに走り出した。車はスピードを上げて走っているのに着かない。「こんなに遠いの?」と思ったらようやく到着。料金は1,000円だった。帰りも出ない声を振り絞ってタクシーを呼び、大学まで行ってもらった。料金は2,000円。歩いても行けそうだと思ったのは何だったのか。
3年前に大往生を遂げた愛犬が元気だった頃、週末の散歩で自宅のある市のほぼ全域を踏破した。隣の市や町にも出かけて行った。自分の考える「歩いて行ける距離」はかなり長いと思っていた。だからグーグルマップを見て大体の距離とルートを調べると、つい「これなら歩いて行ける」と考えてしまう。しかし、郊外の都市は(なぜか)違うのである。
現在滞在中の場所は首都圏ではあるが郊外の都市である。マンションの林立する駅前にはショッピングセンターもおしゃれな店も学校も飲み屋街もある。しかし、一歩出ると車なしではいられない広い地方都市になる。今朝の散歩でそれを実感した。
発端は、孫のためにアレルギー物質を使わないケーキを買いたいと思って探したことである。近くのケーキ屋さんでは扱っていなかったのでネットで調べたところ、同じ市内に扱っている店があった。地図を見たら、「歩いて行けそうな場所」だった。以前それで失敗しているので、今回は朝の散歩で場所の確認をすることにした。ルートは非常に簡単である。問題は距離だけである。歩き始めて間もなく、メインストリート(大型トラックがビュンビュン走る広い道路)まで来た。さあ、ここからどれだけかかるのだろう。しばらく歩くとはるかかなたに家電量販店の看板が見えた。この近くが目的地である。しかし、手元の地図ではこの道路を歩き始めてすぐに焼き肉屋があることになっている。まだない。さらに歩いてようやく焼き肉屋を発見。大きい。駐車場も広い。しかもかなたに見える家電量販店の看板の大きさは変わらない。嫌な予感はしたがひたすら歩いた。ようやく家電量販店の近くまできたところで出発から30分が経過していた。そこからケーキ屋さんのあるショッピングセンターを特定するまでに出発から合計40分もかかってしまった。やはり郊外の距離は地図で見るのと実際に歩くのでは違う。もちろんグーグルマップを見ているのだから距離自体が違っているのではなく、感覚的に違って見えるだけである。
さて、距離感の問題はともかくも「アレルギー物質を使わないケーキ」を買う問題も大きい。ネットで冷凍のものを注文せずに店頭で買うには、車を使うかそれを持たない私のような人はひたすら歩くしかないのだろう。ちなみに自宅の場合15分歩けば買えるのだが。
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所長:石田厚子 技術士(情報工学部門)博士(工学)
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郊外の距離感にご注意
2018.08.26