現在、自宅から電車を乗り継いで3時間ほどのところに滞在している。大学の授業もないので、自由な時間を満喫しているところである。毎朝、歩いて10分ほどのところにある広大な県立公園に行き、1時間くらいかけて散歩する。まだ園内の全てを踏破してはいないが、全体像は掴めてきた。好きな場所も何か所かできた。池が見渡せる場所、芝生のグランドが見渡せる場所などである。そこにあるベンチに腰かけて、スマホで日経電子版を読む。
早朝なので出会うのは中高年の方々ばかりである。犬の散歩をする人、ジョギングする人、ウォーキングする人の3種類に分かれるが、ベンチに座ってスマホを何十分も眺めている人はいない。私だって10年前だったら絶対にそんなことはしなかっただろう。座っていると、時々、蚊が飛んでくる。手で払うと二度と来ない。私は蚊に刺されないのである。最後に蚊に刺されたのはいつだっただろうか。もう思い出せないくらいである。
自宅の庭にはビワ、梅、お隣さん3軒との間の生垣などがあり、草取りも必要である。しかし、庭に出て蚊に刺されることは全くない。子供たちが訪ねてきたときに、蚊取り線香はないのか、虫よけスプレーはないのか、と大騒ぎしているので蚊がいないわけではない。しかし一人暮らしの我が家にはそんなものは無い。
思い起こせば、20年前(50歳になった頃)からアレルギー性の皮膚炎に悩まされるようになった。この苦しみは十数年続いた。皮膚科に行ってはステロイド剤を処方してもらい、一旦は収まる。しかし、しばらくして再発する。段々強い薬になり、遂に薬も効かなくなった。7年前、万策尽きた私は、自力で克服するしかないと覚悟を決めた。やがて不思議なことに皮膚炎は再発しなくなった。体中の痕跡(黒いしみ)はいつの間にか消えた。その頃から花粉症が起きなくなり、なぜか蚊に刺されなくなった。まるで体が入れ替わったかのように。体質が変わるとよく言われるが、これは本当にあると思う。女性の場合は50歳から60歳あたりではないか。還暦というのはこのことにも通じているのかもしれない。
遂に70歳になった。半年後には3度目の定年を迎える。そしてまた職探しである。履歴書に書くべき「自分の強み」も新しいものにしたい。そのような思いで履歴書の用紙をじっくり眺めてみると、過去の経歴、過去の経験ばかりを書けと要求している。そんなものが採用する企業の将来に役立つのだろうか。私がこの5年間学生に伝えてきたものは私の過去の経験ではない。これから起きるであろう課題に対して調査し、分析し、問題を抽出し、解決策を考えることだった。対象となるテーマは年間30近くある。AIの未来、e-sports、仮想通貨、流通業のIT化、外国人労働者問題、少子化問題、ゲーム業界や携帯電話業界の将来・・・。これから起こることにゼロベースで対応することはできる。でも、履歴書にそれをどう書けばよいのだろうか。それに、大半の企業が求めているものは、海外に工場を建てた経験、新しいビジネスを起こした経験、といった過去の成功体験ばかりである。同じことが将来役立つとは限らないのに。もう私は昔とは違う。体が入れ替わって蚊も逃げ出すくらいなのだから。私の強みは過去ではなく将来にあるのだ。分からないかなあ。
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コンサルティングと研修のサービスを提供します。
所長:石田厚子 技術士(情報工学部門)博士(工学)
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体が入れ替わった
2018.08.19