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デジタル化の恩恵(マニュアルの場合)


2018.04.22


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 10年ほど前になるが、私の還暦祝いとして、子供たちが電子ピアノを贈ってくれた。定年退職後に子供の頃習っていたピアノをもう一度弾いてみたい、と私がつぶやいたのがきっかけである。ヘッドホーンを使えば外部に音を出すことなく練習ができる。喜んで古い楽譜を取り出し、練習を始めた。しかし、思うように指が動かない。だんだんやる気をなくしてしまった。もう一つ、デモ演奏という嬉しい機能がついている。有名な曲が60曲も聴けるので、しばらく繰り返し聴いて楽しんだ。それもいつの間にか飽きてしまった。という訳で、10年近く(子供たちには申し訳ないと思いつつ)電子ピアノにはカバーがかけられたままになっていた。

 今年の春、70歳を目前にして、もう一度チャレンジしてみようか、と思い立った。まずはデモ演奏を聴いて気持ちを高めよう、と思ったが、使い方が分からない。マニュアルもない。仕方なく、スマホを取り出して電子ピアノの機種名を入力し、検索してみた。すぐにマニュアルのpdfが見つかった。それを横目で見つつ操作したらすぐにデモ演奏を楽しむことができた。さらに、10年前には気づいていなかった多くの機能があることが分かった。片手のみをデモ演奏で流しながら、もう片方を自分で演奏できる。効果的な練習ができそうである。まずは練習したい曲のデモ演奏を聴きながら楽譜を追うことから始めた。

 そういえば、最近はマニュアルを読むということが殆どなくなった。スマホ(iPhone)はマニュアルなどない。その他の機器類も紙が1枚程度の説明書しかない。あとはネットで検索して使い方を調べ、トラブルの対策方法を探るだけである。これはとても有難い。マニュアルを保管する必要がない。つまり場所を取らず、機種名は本体に書いてあるので記憶する必要もない。

 前回、新聞を電子版に変えたことを書いた。移動中はスマホアプリで読んでいるのだが、そのアプリが新情報の取得をしてくれなくなってしまった。困って対策方法を検索してみたら、アプリを削除してまたダウンロードするしかないということが分かった。その具体的な方法も検索して調べ、瞬時に問題は解決した。

 大学のキャンパスが引っ越しをして、住所が変わった。名刺を作らなければならない。以前は庶務担当に頼んで発注してもらえばよかったのだが、自分でネット注文するようにとの通知があり、pdfのマニュアルが添付されていた。早速注文してみたのだが、次の日、非承認の通知が来た。電話番号に自分の携帯番号を入れたのがまずかったようである。しかし、自分の教員室の直通番号はどこからも知らされていない。電話機はあるのだが内線番号しか書いていない。庶務に連絡して聞こうと思ったが、思いついてその電話機から自分のスマホに外線電話をかけた。つながったので着信履歴にあった電話番号を使って無事名刺発注はできた。デジタル化は紙で情報が伝えられることがない代わりに、自分で(宝探しのように)情報を探り出していかなければならないようである。あれこれ考えることで頭の体操にもなって、高齢者には有り難いことである。



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