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リスクは分析できても行動は変えられない


2018.01.28


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 1月22日、関東は大雪に見舞われた。雪の予報は前の週から出されており、通勤、とくに帰宅時に大きな混乱があるだろうことも予測できていた。そして予測通り大混乱になった。大雪だけではない。台風でもかなり前から予報が出て、様々なリスクが予測され、報じられる。でも、それによって被害が軽減されたという印象は薄い。

 私自身はというと、22日はコタツに張り付いて終日パソコンに向かっていた。大学の授業は無いので、ネットさえ使えれば家でも仕事は可能である。一歩も家を出ることなく、予定していた仕事はすべて完了した。23日はどうしても大学に行かなければならなかったので、覚悟を決めてブーツを履いて出かけた。予想通り列車ダイヤは乱れていたが、予想を下回る3時間半で大学に着くことができた。

 結論から言ってしまえば、リスク分析ができても行動を変えるのは難しいということなのだ。いつもの行動、予定通りの行動をしたい、というのが人間の心理だろう。たまたま私は22日に家で仕事ができたので幸運だっただけで、23日が大雪だったら、混乱に巻き込まれていた。人間の心の片隅には「対策しても無駄になるかもしれない」「遅れても『大雪のせいで』と言えばわかってくれるだろうし、行動しているという意欲は認めてもらえるだろう」という気持ちもあるはずだ。それが予定通りの行動に誘導してしまう。

 人間にはもう一つ、学習するという能力がある。一度でも経験していれば、次に同じことをするときは楽にできるし、間違いを犯して苦労して対策した経験があれば、より深い学びとなって、同じ間違いをしないように行動を修正することができる。まさにそれを今年の確定申告で実感した。65歳から個人事業主であるので、毎年確定申告(青色申告)をしている。e-Taxを利用することで税務署には行かず、自宅のパソコンで書類を作成、送信している。実は、簡単そうであるが毎年トラブルが絶えなかった。データが揃わない、計算ミス、e-Taxアプリのダウンロードやバージョンアップ、通信エラーなどなど。昨年は、それまで使っていた住民基本台帳カード(住基カード)からマイナンバーカードに変更したため、さらなる混乱(深い学び)を引き起こした。しかし、今年は違った。データ揃え、入力、計算結果のチェック、送信まで3時間ほどで完了した。学習の成果である。

ところで、確定申告で入力すべきデータはすでに電子化されている。一か所にまとまっていないだけである。それを人手でまとめ、計算し、記述し、提出している。データを一元化すれば確定申告は自動化できるはずである。リスク分析の精度を上げる努力(学習)をさせられるよりも、AIを使って申告の手間を省かせてもらえた方がずっとありがたい。

天候や自然現象の予測精度、リスク分析結果の精度が上がれば、果たして人間の行動は変わるだろうか。それはかなり難しそうである。精度が上がっても100%の確実性があるわけではない。となれば、予定の行動をとりたくなる心理作用は依然として残るだろう。さらに難しいのが予測できない自然災害である。23日には草津白根山の噴火で死者も出た。AIの踏み込めない世界はまだまだ存在する。



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