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定年は何度あってもよい


2018.01.14


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 今年の年賀状には、殆ど全部の相手に対して次の言葉を添えた。「現在の職場である東京電機大学もあと1年で定年となります。70代をどう過ごそうか思案中です。」この言葉の中には悲哀の気持ちや寂しさは無い。むしろ、次への一歩を踏み出す前向きな気持ちが込められている。1年後に迎える定年は私にとって3回目である。最初は60歳の定年、2回目は再雇用されてからの65歳の定年、そして大学の70歳の定年ということになる。

 誰にとってもそうだろうが、退職と定年はイコールではない。私自身も、結婚退職、転職による退職、その他不測の事態による退職など、数々の退職を繰り返している。その理由の一つが定年であり、退職理由の中で最もすっきりして潔いものである。

 定年の良い所は、何年も前からその時期が分っていることである。それにより心の準備ができる。少なくともショックを受けなくて済む。契約切れと違って、なぜ、どうして、などと考えなくとも済む。誰でも平等に年を取るからである。自分でコントロールできないことを悩んでもしょうがないと私は思っているので、「さあ、次に行こう」と吹っ切れる。

 定年の問題点は、その前提となる雇用がなければ成り立たないことである。タイトルにあるように、定年は何度あってもよいのだが、そのためには何度も雇用されなければならない。そちらが難しいのである。特に、年齢を重ねれば重ねるほど雇用されるのは困難になる。多分、70代の私を雇用しようとする企業や組織はもう無いのではないか。

 自営業の友達の話では、定年が無いだけに、止め時を見つけるのが難しいとのことである。顧客との関係、後継者の問題など、一人ではなかなか解決できない問題があるのだろう。私も、半分は自営業だが、幸か不幸か特定の顧客はなく、細々と営業している状態である。当然、70代からはこちらを主体にすることになる。であれば、定年の良さを生かしたうまい働き方を考えてみたい。

 まず、20代の新入社員が60代で定年を迎えるという形を想定するのは現実的ではない。そもそも期間が長すぎる。やはり、始まったときに終わり方をイメージできるくらいの期間がよい。その意味で、60歳、65歳、70歳、という5年ごとの定年というのは現代のスピードにも合っていて良かった。5年後に一旦止めて新しい5年を始めるというものである。

 65歳からの大学教員の仕事は、60歳から65歳までに行っていた企業内のコンサルタント育成の経験が役に立った。同じように、70歳からの(本格的な)技術士事務所の仕事としての人材育成には、大学での技術者養成の経験を大いに活かしたいものである。いかにして基本を理解させ、自分で問題を見つけさせ、柔軟に解決策を考えさせるか、様々な工夫をしてきた。この経験を今度は社会人に向けて役立てたい。その期間は5年間と決め、5年後に新たな道へ進むのである。

 区切りを付けながらであれば、長く働き続けることもできるだろう。近くに目標があれば、なんとかがんばれるものである。そんな気持ちで70歳から100歳までを生き延びたい。ということは、あと6回も定年を迎えることになるのか。



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