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インドの大学の勢いに圧倒される


2025.12.7


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 今年(2025年)11月の最終週に、インドの南部の都市ベンガルール(バンガロール)の企業と大学を訪問した。ベンガルールは「インドのシリコンバレー」と呼ばれている。南インドの1都市を見てインドを知ったとは決して言えないのだが、現在のインドの一端、特に成長の勢いを知ることができた。

 残念ながら、1か月間必死で勉強したヒンディー語は全く出番がなかった。通訳の女性に聞いたところ、南インドでは学校でヒンディー語を教えないので、多くの人は現地語(カンナダ語)しかしゃべれないとのことである。ヒンディー語とカンナダ語は全く違うので相互の会話はできない。ただし、仕事もショッピングも英語さえできれば事足りる。

 とにかく、朝も昼も夜も、道に車と人が溢れている。野良犬が至る所で寝転んでいる。大人しくて決して吠えたりしない。餌が十分与えられているのだろう。ホームレスを一人も見かけなかった。貧しい人たちが何とか生活していけるようになっているようだ。

 ベンガルール郊外にあるChrist University/ Kengeri Campusという私立の大学を訪問した。広大なキャンパスにはよく手入れされた植物が茂り、公園のようだった。多くの立派な建物が点在し、学生寮もある。朝には何台ものスクールバスに遭遇した。数時間の訪問時間の中で、大学スタッフの説明を受けただけでなく、キャンパスの中の施設の見学もさせてもらった。企業に対する提案コンペの様子も見せてもらった。男女の学生たちは明るい笑顔で話をしながら歩き、日本の大学と何ら変わりはない雰囲気だった。

 外部機関との交流を担当している人たちからは、いかにこの大学が素晴らしい教育をしているか、どれだけ発展しているか、についての説明を受けた。さらに、コンピュータサイエンスを含むエンジニアリングとテクノロジーの関係者がより具体的な教育内容の説明をしてくれた。学部の男女学生も学生生活について語った。(皆さんとにかくよくしゃべる。)

 特に語られたのは、大学のランキングを上げるために様々な努力をしていることである。最新の技術を教育するためにカリキュラムを常時アップデートし、そのための教授陣の再教育を行っていること、研究の質を上げるために学部生から論文の指導をし、修士への進学率を上げる努力もしていること、学生一人当たりの指導者数が非常に多いこと、上級生と下級生が勉強会を実施していること、産業界とのつながりのためにインターンシップを学部の2年生から実施していること、海外の企業や大学との交流を行っていること、研究中心の学部を作る計画があること、などである。日本の企業や大学とも連携したいという強い思いが感じられた。昼食時も会話が続けられ、内容はともかく勢いに圧倒された。

 日本の大学でも同じような取り組みはしている。大学も経営を維持しなければならないので産業界との連携は必要である。大学院への進学率を上げる努力もしている。研究の質を上げる必要があるのは当然である。でも、日本の大学はそれらをこれほど強く主張していないように見える。もっと日本はアピールが必要ではないか。特に海外に向けては。 インドの発展の源は、コミュニケーション力と勢いにある。そこは学ぶべきである。

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