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流行語とは何なのか


2025.11.16


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 朝、目覚める直前に何かを思い付く。半分は夢の中である。それは、現在勉強中のヒンディー語の言い回しだったり、今日やるべきことだったりする。何かが閃く(ひらめく)、といった大げさなことはほぼない。研究者とは違って、頭の中に追究すべき課題を持っているわけではないからだろう。頭の片隅にひっかかっていたことが湧き出してきただけなのだ。ただ、毎日の2時間前後のウォーキング中には、閃くというほどではないが、思いもよらないことが次々と浮かんでくる。大抵は、それがコラムの題材になるのだが。

 年末近くなると、流行語大賞というものが話題になる。これまではほとんど興味がなかった。なぜなら、ノミネートされた言葉の多くが一度も見聞きしたことのないものだからである。発表されるたびに、世の中から取り残された気分になるのが落ちだった。さらに、大賞に選ばれたものすら一度も見聞きしたことがないときは、浦島太郎気分だった。

 理由は分かっている。テレビドラマは再放送かごく限られたものしか観ていないし、バラエティーは全く見ないので、最近のタレントや芸人の名前も知らない。人の顔や名前を覚えるのが非常に苦手なので、アイドルは男女問わずすべて同じ顔に見える。それに加えてスポーツをするのも観るのも苦手なので、新聞でもテレビのニュースでもスポーツコーナーはパスである。

 それなのになぜか、ウォーキング中に意識に上った。そもそも流行語とは何なのか。私以外の殆どの日本人は、ノミネートされた言葉の大半を知っているのだろうか。日常会話の中でそれを話題にしたり、使ったりしているのだろうか。さらには、何を根拠に大賞が決まるのか。どうでもいいとは言え、疑問は深まるばかりである。

 今年は、スポーツに関するものがノミネートされなかったせいか、私でも分かるものがやや多めだった。そこで、自分なりに大賞になりそうなものを選んでみることにした。まずは「ミャクミャク」かな。最初に見たときは、その名前も姿も「気持ち悪い」としか言えなかった。それが世の中で「カワイイ」と言われ、テレビでも度々見かけるようになるにつれ、徐々に自分でも可愛いと思えるようになってきた。ただし、そのグッズをつけている人を見かけたのは今までに2回しかない。もう一つは「古古古米」である。こちらは、全国的に広まっている言葉だと思う。令和の米騒動には、すべての人が生活に何かしらの影響を受けているはずである。高いブランド米を買うか、安いブレンド米を買うか、私のようにコメを食べるのを止めるか、の三択しかないのだから。いずれを選ぶにしても、スーパーでコメの値段を確認しているはずで、その時に「古古古米」という言葉が一瞬頭をよぎるはずである。その他は、ある程度限られた年代、メディア、コミュニティの中での流行に見える。

 さて、私の大賞候補は2つに絞られた。次なる問題は、これら二つのうちどちらが他人との会話の中に多く出てきたか、である。私の場合、ミャクミャクについては家族とすら話をしたことがない。古古古米は何度かある。まあ、結局選ばれるのは私の知らない言葉になるのだろうな。私はますます古古古米状態になっていく。

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