トップページ > コラム

これが本当の潮時か


2025.10.5


イメージ写真

 自宅の洗濯機が突然エラーを発するようになった。マニュアルを読むと、コンセントを抜き差しても同じなら故障なので修理する必要があるとのこと。そのとおりやってみたら動いた。ほっとしたのも束の間、数日後同じ現象が起きた。今度は数回の抜き差しが必要になった。さらに、次の日からは電源が入らなくなった。それでも10回位コンセントの抜き差しをすると電源が入ったので何とか使えた。もう限界だと実感した。買い替えよう。結局、古い洗濯機を処分して新しいものを使えるまでに2週間以上かかることになった。それまで何とかしのがなければならない。何度コンセントの抜き差しをしなければならないのか。

 家電品でも、パソコンなどの電子機器でもよくあることだが、「買い替えようかな」とつぶやくと慌てて動き出す。まるでこちらの言葉がわかるかの如くである。この洗濯機も同じだった。新しい洗濯機を注文した日の夜には、何とすぐに電源が入り、エラーもなく洗濯を終えた。なぜか、次の日も次の日も、1週間以上過ぎても、何事もなかったかのように働いている。有難いことだが、何故なんだ。買い替える必要などなかったのではないか、と一瞬、後悔した。

 いやいや、これまでの私の経験では、「まだ大丈夫だから新しいのを買わないで」と機械が必死で動いている期間は長くはなく、いずれは力尽きる。テレビも、パソコンも、電子レンジもそうだった。落ち着いて考えてみる。トラブルを起こしたのは、もう十数年使っているドラム式洗濯機である。一般的には寿命を迎えていてもおかしくない。何より、一人暮らしには大き過ぎるし、様々な面で無駄が多い。それに音がうるさい。小さな全自動の洗濯機で十分だ。何と言っても、いつ動かなくなるかと不安な時間を過ごすのは精神的にも良くない。今回は、本当の意味での買い替えの潮時だったのではないか。

 「本当の意味での」とつけ加えたのには理由がある。「潮時」の意味は「丁度よいタイミング」と思っているが、最近は違った意味で使われることが多いとのことである。それは、「物事の終わり、限界、引き際」というネガティブな意味である。確かに、何かを諦める時によく使われる。むしろポジティブな使い方は殆ど見ない。今回の洗濯機の買い替えでは、最初の段階では「うちの洗濯機はもう終わった」というネガティブな感覚での「潮時」だったかもしれない。しかし、今はちょっと違う。遅かれ早かれ寿命が来ることが分かっている、一人暮らしには無駄であることを気づいた今こそ、買い替えのタイミングだったと考えられる。半分は負け惜しみかもしれないけれど。

 丁度よいタイミングである「潮時」の見極めは、実は難しい。将来が見通せないからである。例えば、私の若い頃は、もう少し我慢したらもっと良くなるはず、と思って、やりたいこと、買いたいもの、食べたいものを我慢することが多かった。しかし、そこには落とし穴があった。高齢になるとできないことが増える。特に、「やる気」が失われてくる。一歩踏み出すのに多大なエネルギーを要する。後悔先に立たず。特に若い人には本当の意味での「潮時」を見極めることをお勧めしたい。「終わって」からでは遅い。

コラム一覧へ