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小さなモノで埋めることが生産性を高める


2017.08.27


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 25年以上前になるが、会社の管理職研修の一環で、「七つの習慣」のセミナーを受けた。当時、この書籍はベストセラーになっており、同時にセミナーも盛んにおこなわれていたようである。そこで一番印象に残ったのが(というか他は殆ど覚えていないのだが)、ガラスの金魚鉢と石と砂を使った実験だった。空の金魚鉢に石と砂をびっしり詰めるにはどうするか、という問題である。先に砂を入れてしまうと石は余ってしまい、金魚鉢の中は隙間だらけになる。しかし、先に石を入れてから砂を入れると、隙間に砂が詰まり、隙間なく金魚鉢は石と砂で満たされる。石と砂を仕事とし、金魚鉢を決められた時間や資源とすれば、まず重要な仕事(石)を先に計画的に配置し、その隙間の時間や資源で重要でない仕事(砂)を行えば、全体として全ての仕事が決められた時間や資源で行える、ということになる。

 数年前に思い立って「七つの習慣」の書籍を読んでみた。しかし、どこにも石や砂は出て来ない。あれはセミナーだけの内容だったのか。それとも別のセミナーと間違えていたのか。いずれにしても、今でも有効な教えであると思っている。そしてこれは、無駄を省く、という精神にも合っており、最近話題のエア・ビーアンドビーやウーバーなどの、空いている部屋や車の席を他人に貸すビジネスにもつながっている。価値を生まない資源(金魚鉢の隙間)に細かな仕事(砂)を提供することで、全体としての生産性が高まるということである。

 現在の日本は人手不足が問題となっている。本当だろうか。金魚鉢(日本の人的資源)に隙間は無いのだろうか。そもそも、金魚鉢に入れられるのは石だけと思い込んでいないだろうか。言い換えれば、まとまった大きな仕事だけがやる価値があり、たとえ細かな資源が余っていてもそれに細かい仕事をはめ込むなど面倒でやっていられないと思い込んでいないだろうか。しかし、そう決めつけるのは問題である。事実、空き部屋に泊まりたい人や、通勤途中の車の助手席に乗って移動することを好む人は存在しているのである。

 現実問題で考えてみよう。金魚鉢の隙間は、長時間働けないけれども働く意欲はある高年齢者や育児、介護を担う人たちである。こういう人たちにできる仕事を作る方法は、細かい砂(仕事)を見出すか、石を細かく砕いて砂にするかして、金魚鉢に流し込むことである。もちろん現実のビジネス社会はもっと複雑である。人的資源が一様ではなく高スキルの人も低スキルの人もいるように、隙間は一様ではない。面倒かもしれないが、日本の生産性を向上したいのなら、隙間の人材に仕事を提供する必要はある。それこそ、人工知能(AI)を駆使して仕事と人のマッチングをして欲しい。

 無駄をなくすために小さくする工夫は他にもある。例えば、私は日本酒用の小さなグラスで牛乳やジュースを飲む。一杯で足りなければお代わりすればよい。飲みきれなくて捨てることはないし、無理に飲んでお腹を壊すこともない。お饅頭などもいくつかに切り分けて、食べない分は冷凍する。一人暮らしの年寄りの知恵である。



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