仕事部屋の中にはコード類が沢山ある。それらは互いに絡みあっている。コードの端には扱いに注意すべき電子機器があるので落ち着いてほどかなければならない。注意深い行動も認知症予防にとって大切だ。しかし、絡まっているものが糸だったりすると、面倒なのですぐにハサミでバッサリ切ってしまう。その傾向は年齢を重ねるにつれ強くなっている。
絡まってどうにもならなくなることは情報システムではよく見られる現象である。かつてよく見られた「増築を繰り返した古い温泉旅館のようなもの」だ。火事に遭ったら逃げようがない。例えば、古くからあったシステムは、機能を増やしていくうちに構造が分からなくなってしまう。企業の統合などで複数のシステムを繋いで使おうとすると、構造が複雑になって制御が困難になることもある。平成の半ばくらいまでかなり苦労した記憶がある。
複雑に絡み合った古いシステムの問題を解決するためには、壊して新しいものをゼロから作るのが一番良いのだが、それにはコストと時間がかかる。まだ使えるところがあるのに勿体ない、と考えるのは当然である。少しずつ修正して他への影響をみながら改造を加えていくのがよいのだろうが、結果として思いのほか時間がかかるし、問題の先送りにもなってしまう。結局のところ、本音では、大きなハサミでばっさりと切ってしまいたいと思っている企業、組織は多いのではないか。
現代は、すべての物事が最適解を見つけるためにつながりを広げている。それに伴って、複雑さが増し、ひずみが生じ、制御不能になっている。昨年(2024年)秋にサンフランシスコに行ったときそのひずみを実感した。高いビルのオフィスやカフェテリアでは、技術者たちが熱くAIの発達がもたらす未来の生活を語っていた。一方で、街にはおびただしい数のホームレスが冷たい雨の中でうずくまっていた。日本においても、格差は広がっているし、多くの矛盾を抱えている。エネルギー問題、食料問題、少子高齢化問題、年金問題どれをとっても、問題を先送りしているとしか見えない。そんな世の中で、大きなハサミをふりかざす人が出てもおかしくない、とつい思ってしまう。例えばトランプのような。
トランプ大統領の岩盤支援層は4割を切ることはないだろうと聞いた。世の中のひずみや矛盾を感じている人たちの中で、一定数は「じっくりと最適解を見出す」よりも「ハサミでバッサリと切ってしまう」方を選ぶのだろう。世界中がハサミの脅威におびえ、対応に走り回っている。一方で、世界は傷を負いながらもいずれは落ち着くところに落ち着くだろう、と醒めた目で見ている人たちも多いのではないか。私のように。
最近、ちょっとやっかいなことを持ち込まれた。最初は何を要求されているのか理解できなかったのだが、落ち着いて考えているうちに状況が見えてきた。次はそれをどう解決するか、である。そこで、一晩寝かせることにした。よく、明け方に夢の中でよいアイディアが浮かぶことがあるからである。今回は寝入りばなに解決策の端緒が見えてきた。それは次の朝にさらに明確になり、色々な情報を集めて考察することで行動が明確になった。
世の中の多くの問題が、ハサミを取り出すまでもなく最適解を得られるとよいのだが。
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コンサルティングと研修のサービスを提供します。
所長:石田厚子 技術士(情報工学部門)博士(工学)

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絡まった糸はどう処理するか
2025.5.18