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問題が見つかってよかったじゃないか


2025.4.27


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 トラブルというものはいつ起きてもおかしくない。年齢を重ねると失敗の事例が積み重なって、その思いが強くなる。特に新しいことを始めるときは、何か悪いことが起きるのではないか、失敗するのではないか、と考えてしまう。だから、高齢者はますます新しいことにチャレンジしなくなり、行動をためらい、家に引きこもり勝ちになるのか。しかし、高齢者こそ無理をしてでも行動を起こさなければならないのだ。認知症予防のためにも。

 最近、勝負服(?)とも言えるものができた。女性の国会議員が着るような華やかなスーツなどではない。ただの長袖Tシャツである。グレーの地にサンフランシスコの街のカラフルなイラストが描かれ、その下にSAN FRANCISCO, CALIFORNIAと書かれている。昨年サンフランシスコとシリコンバレーに行った時のお土産ではない。Amazonで安く買った普段着である。なぜこれが勝負服になったのか。それは、今年(2025年)の3月に、多言語学習のコミュニティの発表会で、4か国語(トルコ、インドネシア、ポルトガル、英)を使ってシリコンバレーで見聞したことをプレゼンした時に着ていたものだからである。その時の私は、自分が肌で感じたことをみんなに聞いてもらいたい一心だった。逃げ出したいとか、失敗するのでは、とか、怖いとか一切考えなかった。その後、このTシャツを着るとなぜか気持ちが高ぶり、やる気が湧いてくるようになった。

 やることが決まっていて、それをどうしてもやりとげたいと思ったら、失敗など恐れなくなるのではないか。英語を除けばポルトガル語の文法は少しかじった程度であり、トルコ語、インドネシア語に至っては語順すら分からない。それでも、伝えたいという気持ちが強ければ何かしらの表現を絞り出すことができた。聞いている人たちは、多分私の言っていることを「言語としては」正しく理解できなかっただろうが、身振り手振りと下手なイラストを見て、思いを感じ取ったのではないか。コミュニケーションの原点はそこにある。

 最近、ある失敗をしでかした。Teamsというシステムを使った同窓会でのことだ。Teamsは仕事でよく使っているので何も心配することなく参加したのだが、一つ忘れていたことがあった。パソコンを最近変えたのだ。「平成君」と呼んでいる中古品である。機能も性能も申し分ないのだが、音源を聞いているとき出力される音が良くない。となるとマイクの性能も怪しい。案の定、参加者の声が何重にも聞こえるし、自分の声はキーンという音でよく聞こえない。仕方なく、自分のマイクをミュートにして他人の話を聞くだけにした。裏で設定のチェックもしてみたが埒があかなかった。最後になって気づいた。何とTeamsが2つ立ち上がっていたのだ。しかも、上に見えていたマイクだけがミュートになっていて裏のTeamsでは音を拾っていたらしい。途中でかかってきた電話での会話が筒抜けになっていたようだ。やらかしてしまった。まあ参加者は高齢者なのでとっくに忘れているだろうが。

 来月は昔の上司や先輩方とのTeamsの会合を私が仕切らなければならない。そこでトラブったら大変だ。先に問題が見つかってよかったじゃないか。すぐに気持ちが切り替わった。そういえばその時、たまたま勝負服を着ていたのだった。

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