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日本の生産性は低い、であればどうするか


2017.08.12


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 日本の2015年の国民一人当たりのGDPが世界で27位というデータを様々な所で眼にしてきた。生産性であれば、労働者一人当たりの生産高を言うべきではないか、と思ったら、こちらのデータはもっと悪かった。国連が出した労働人口比率に基づいて出した、労働者一人当たりのGDPの順位はさらに低く、先進国の中ではイタリアやスペインを下回る、とのことである。(新・所得倍増論:東洋経済新報社より)

 もしも私が30代、40代の働き盛りでこのデータを見たら、「そんなはずはない。計算方法が間違っているのではないか?」と思ったかもしれない。もっと遡って小学生の頃だったら(意味が分かるかどうか別として)、「そうかもしれないな。でもお父さんたちがこんなに頑張って働いているんだからきっとすぐに世界一になるさ」と思っただろう。しかし、今の私は、なるほどと納得してしまう。なぜなら、最近ニュースで盛んに取り上げられる「過労死」「ブラック企業」などの「長時間労働」の問題、景気は良いはずなのにちっとも給与が上がらない現実を見れば、インプット(労働時間)が多くてもアウトプット(売り上げ)が伸びていないのは感覚的にもすぐ分かるからである。

 例えば、海外のIT企業がパッケージ・ソフトを全世界に売りまくり、膨大なコンピュータ資源(ネットワーク、ハードウエア、ソフトウエア)をクラウドサービスで全世界に提供してサービス料を吸い上げているのに対して、日本では顧客企業に常駐したエンジニアは、日夜、汗水たらしてシステム構築している。日本のIT企業の収益の規模が海外の大手企業と比較して桁違いに小さいことはすぐに分かる。

 日本企業はどうやって生産性を上げればよいのだろうか。理屈から言えば、GDPを上げて労働者を減らすことである。しかし、現在も将来も人手不足であることが分かっている状況で労働者をこれ以上減らすことは無理だろう。であればGDPを増やし、労働者の働き方を変えるしかない。GDPを上げる方法は海外に市場を広げることしか思いつかない。高齢化社会では、安いスマホ、手元の良く見えるメガネ、健康補助食品と孫のおもちゃくらいしか買いたいものなどない。国内市場の規模が減ることはあっても増えない。

 働き方を変えるとは、経営者が従業員のパフォーマンスを最大限引き出せる労働環境を作ることを意味する。これから増える労働者は女性と高齢者である。まずは女性の立場から考えてみる。45年以上働いて来たが、環境さえ整っていれば男性と女性の間で仕事の能力は差がない、と言える。ただ、出産、育児の間だけはどうしてもアウトプットは出せない。その場合でも、仕込み(次の仕事のための準備、勉強)をしておけば、その後の長い仕事人生の中で取り戻しは十分可能である。高齢者の方はもっと難しい。体力的な問題から通勤がつらくなる。ITの力を利用すれば通勤しなくても働ける環境はできる。電車の中でスマホやタブレットをいじっている高齢者が多いことから、業務のIT化はすぐに受け入れられるのではないか。AIを使えばさらに労働環境は良くなる。

 日本の生産性は低いことを受け入れた上で、早く対策を考えて行こうではないか。



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