腸閉塞で入院し、退院後すぐに大学の講義と学生指導を無理して続けたことがたたって歩けなくなった。貴重な1か月の夏休みは病院に行くことと家で読書することの繰り返しとなった。というわけで、亡くなった夫の残したものを含め、色々な本を読み漁っている。しかし、手術後の貧血がまだ治っておらず、だるくて横になることも多いので難しい本を根詰めて読むことができない。そんなとき、近所の本屋で面白い本を見つけた。
「哲学用語図鑑」「続 哲学用語図鑑」(プレジデント社)である。殆ど全部イラストなので読んでいて疲れないし、理解しやすい。そもそも私は哲学など殆ど縁がなかった。高校のときに授業があったように思うが、殆ど居眠りして終わったのではなかったか。まあ、時間もあることだし、知らなかったことを知るのも楽しいかもしれない、くらいの感覚であっという間に読んでしまった。
哲学の一端に触れたかというとまだそれほどでもなく、歴史的流れや全体像が理解できたか、というとまだ頭の中は混乱している状態ではある。でも、関連する本を少しずつ読んでいけば埋まっていくのではないか、とは思える。
両方の本に、紀元前600年から現代にいたる年代を横軸に取り、その上にその時代の哲学者の生きていた期間を横棒で示した図表がついている。それを見れば、同時代にどのような哲学者達が活動していたか分かる。気づいたのだが、特定の時代に多くの(影響力のある)哲学者が固まっている。逆に言えば、誰もいない時代もあるということである。これはなぜだろうか。
影響力のある哲学者が固まっているところをよく見ると、少しずつずれている。つまり有力な哲学者の何十年か後(時代が古ければ百年以上になることもあるが)に次の有力な哲学者が表れる、といった具合である。これは次のようなことではないか。まず、影響力のある哲学者が現れると、弟子たちがその考えを理解し、解釈し、整理し、体系化していく。「継承」の時期である。その段階で、その考えに異を唱える別の哲学者が現れる。「反発」の時期の到来である。こうして哲学は発展してきたのではないのか。
多分、多くの哲学者は自分の考えをうまく弟子たちに伝えきれず、そのまま消えていった可能性がある。伝えられなければ反発もなく、新たなものは生まれない。伝える力は重要だが、それを体系化できるまで理解し、解釈し、整理できる弟子の存在も重要である。そしてまた、反発されることで新たなものが生まれるのであれば、後継者たちは、批判をどしどし受け入れるべきである。
継承と言うと、師匠のやることをそのまま鵜呑みにして再現することのように見えるが、そうではない。理解し、解釈し、整理し、体系化するとともに改善を加えることも含まれる。それが師匠の成し遂げたことの完成版となる。そして後は、次の時代に全く新たな概念や理論が出るのを喜んで受け入れる。それが進歩というものだろう。
凡人である大学教員の私は、せめて学生たちに伝えることの努力は怠るまい。
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コンサルティングと研修のサービスを提供します。
所長:石田厚子 技術士(情報工学部門)博士(工学)
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継承と反発が新たなものを生む
2017.08.06