腸閉塞を患って入院し、手術を無事終えて退院してから1か月が経とうとしている。手術後の経過は順調なのだが、まだ解決されていない大きな問題が残った。左脚が痛くて歩けない、という症状である。先日、整形外科で診察を受けたが、骨には問題がなく、再度総合病院で診察を受けることになっている。原因不明の段階ということである。
退院してから4週間、杖にすがりながら大学の講義を続けていた。最初の1週間は、大学構内のゲストルームに泊まり込むことにより通勤せずにすませていたが、その後は、片道3時間(往復6時間)の通勤を週6日(土曜日は2つのキャンパスでの講義)行っていた。これが左脚の痛みをひどくさせる結果になったことは否めない。結果はどうあれ、大学教員としての務めを果たせたことでほっとしている。夏休みに入った今は体の回復と治療に専念しようとしているところである。
私の症状は10m以上歩くと左脚の痛みがひどくなり辛くなるというものだが、もう一つ、階段はもちろん、ちょっとした段差が昇れないというものがある。家の門からドアまでに3段の階段があるのだが手すりがなく苦労している。
通勤は公共交通機関を使っている。家からJRの駅まではバス、それからJR、私鉄と乗り継ぎ、大学の最寄り駅から大学の自室まで20分間(通常なら15分以下)、歯を食いしばって杖にすがって歩く、という行程である。最もつらいのが最後の歩きであるのは当然だが、バス、電車の乗降、電車の乗り継ぎもかなりつらい。
バスに乗るときは左手で手すりをつかみ、右足を踏ん張って体を持ち上げることを繰り返すのだが、同時にICカードを読み取り機にタッチする必要があるので結構面倒である。杖もじゃまになる。そんな時、段差のないノンステップ・バスに遭遇すると嬉しくなる。これまで、乗降の出入り口では段差がなくても、殆どの椅子が高い位置にあって何となく不便に感じていたノンステップ・バスをこれほど心待ちにするとは思いもよらなかった。
駅での乗り換えは、私の場合、JRと私鉄の駅が離れていて、しかも階段が多いことが困難さを増している。幸い、手すりを使えば階段を降りることはできる。最近は、どの駅の階段も手すりがついているので問題はない。しかし、昇りに対してはエスカレーターかエレベーターを使うしかない。
エレベーターの位置は、一度経験すれば覚えられる。乗る車両とドアの位置を決めておいてすぐにエレベーターに乗れるようにすることは可能である。しかし、エスカレーターは、階段があれば必ずついているわけではないし、ようやく見つけても降りだったりすることもあるので、エスカレーターつきの階段を求めてホームを歩き続けることも多かった。エレベーターよりも待たずにすぐに乗れるエスカレーターが便利なので、駅での設置は大歓迎である。
今回の辛い経験は「働くことの意味」を考えさせてくれると同時に、公共施設のバリアフリーについて身をもって知ることができる貴重な体験と受け止めたい。
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コンサルティングと研修のサービスを提供します。
所長:石田厚子 技術士(情報工学部門)博士(工学)
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足が不自由になって学んだこと
2017.07.30