トップページ > コラム

タイパ時代に忘れてはならないこと


2024.5.12


イメージ写真

 スピード時代と言われてからかなり時間が経っている。現代は、速いだけではなく価値も享受できなければならないタイパ時代である。それを実感したのが、今年の連休中に私が行った「スマホの機種変更」だった。何と、決心してから24時間で私のスマホ環境は大きく改善した。でもその裏には、機種変更を考え始めて実現するまで4年も費やしたという事実があるのは忘れてはならない。

 私が使っていたのは8年前に出たiPhone SE(第一世代)である。数年前から、冬になるとバッテリーが瞬時にゼロになるという現象があり、外では使い物にならなかった。4年近く前から機種変更を考えていたのだが、同時期に仕事で不可欠なパソコンの不調が相次ぎ、毎年のように新しいものを購入せざるを得なかった。値段が同じくらいのスマホまでは手は出せなかった。しかし、新たに参加したコミュニティ活動や、家族との通信にSNSは欠かせない。特に、自宅の固定電話と光通信ネットワークを解約してからは、スマホは外部との重要な連絡手段になった。利用できなくなる事態は避けたい。潮時は来ていた。 連休の中間のある日、機種変更が条件で中古のiPhone 12が格安で買えるという通知を受信し、思い切ってその場で注文をした。すぐに契約成立。次の日は休日にもかかわらず、昼過ぎにはiPhone 12が届いた。夕方から環境とデータの移行作業を開始、殆ど待つだけの作業となった。夕食の支度を始める前にLINEで家族に連絡を取ることができた。さらに、スマホケースをAmazonで注文し、次の日の午後にはポスト投函してもらえた。

 環境の移行がほぼ自動的に行えたとは言え、トラブルが皆無だったわけではない。LINEの移行が途中で止まってしまったり(これは新スマホの電源を入れなおしたら解決)、日経電子版アプリがIDとPWを認識しなかったり(これはアプリの再インストールで解決)、テザリングができなくなったり(これはスマホ名とPWの初期値変更で解決)などがあった。全てGoogleの検索だけで解決策を得ることができた。

 こうして、実質24時間以内で新たなスマホの環境が使えるようになったのだが、非常に満足している。バッテリーの持ちもよいし、何より画面が大きくて見やすい。機種変更の部分だけ切り取ってみれば、非常にタイパが良い仕事なのは確かである。しかし、悩み続けた4年間も加えると決してそうは言えない。かと言ってもっと早く機種変更しておけばよかったとも言い切れない。それには2つの理由がある。一つは中古品の値段が下がるタイミングである。もう一つは、環境の移行作業の自動化度とトラブル対応の知識(ノウハウ)の活用可能性である。いずれも今回は良いタイミングだったと思っている。

 タイパ時代と世間は当たり前のことのように言うが、実は限られた一面だけを見ていることは多い。例えば、生成AIを使ってレポートを書けば、時間の節約ができて良い成績が取れる一石二鳥の様に見えるが、自分で考え、まとめる力は落ちていくだろう。翻訳アプリを使えば外国語の勉強などしなくても会話はできるだろうが、脳を働かせての真のコミュニケーション能力は培われないだろう。タイパの享受は最後の一瞬だけでよいのだ。

コラム一覧へ