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デジタル化の恩恵は知らぬ間に訪れる


2024.2.4


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 毎年恒例の所得税の確定申告を今年も1月末までに済ませた。e-Taxによる申告は10年に及ぶ。当初は、毎年、システムの使い方を思い出すことから始め、申告まで辿り着くのがひと苦労だった。それが年々楽になってきているのを実感する。e-Taxのシステム改善されてきたせいもあるが、関連する情報を得るために利用する他のシステムが進化していることも影響しているかもしれない。今回最も有難かったのは、マイナンバーカードを使うことにより、マイナポータルから辿って公的年金の源泉徴収票がダウンロードできたことである。マイナンバーでデータが連携されていることのメリットは他にもあるのではないか。

 民間のサービスも、こちらが望む、望まないに関わらずネットを介して行えるようになっている。かなり前から銀行の取引はネット経由で行ってきたが、最近になってそれはスマホのアプリで行う形式に変更された。当初は設定するのが面倒だと思ったが、使えるようになったら違った。これまでは、PCを立ち上げて取引履歴を見るのにも時間と手間がかかっていたのに、スマホのアプリによりほぼ一瞬でできることの便利さに驚かされた。

 デジタル化の恩恵は、気付かないうちにじわじわと生活の中にしみ込んでいるようだ。確かに、新しい製品が生まれて生活が一変したこと、例えばスマホの出現などと比べれば目に見えない変化のようである。これまでできなかったことが新たにできるようになったわけではない。公的年金の源泉徴収票は郵送されてくるし、PCを使えば銀行の取引履歴は見られる。でも便利さは大きく違う。まだまだ私にとっての便利な仕組みがある。多くの公共料金はスマホでバーコードを読み取り、Pay-easyでスマホから支払うことができる。ところが、それができない公共料金もあるので、ぜひ早く対応して欲しい。

 月の地上を探査機が行きかって資源になりそうなものを探し、いずれは人が長期滞在できるような時代がくるだろう。量子コンピュータが実用化されて、現在とは比較にならないほど高速にデータ処理ができる時代も来る。AIはまもなく人間の能力を超えるかもしれない。さらに言えば、まだまだ我々の知らないところで大きな技術的な変化、進歩が進んでいて、我々の平均寿命が120歳になってしまうかもしれない。こういった変化は、若い人や現役世代はともかく高齢者には夢物語の様に見える。でも、目に見えないところで進んでいる変化や進歩はぜひとも享受したい。なぜなら、その変化を柔軟に受け入れられるか否かが生活の質に影響するのは明らかだからである。

 母は今年100歳になる。今、母の生まれた時代の夢野久作やアガサ・クリスティの小説を楽しんでいる。50年前のアイザック・アシモフの小説にも夢中になった。不思議なことに、技術のレベルは現代とは比べ物にならないはずなのに、古さは全く感じられない。むしろ、現代に通じるものを強く感じる。それは、その時点で新しい物や考え方を積極的に小説に入れているからである。いつの時代も新しい技術や理論が生まれている。それにより意識や生活に変化が起きる。それを察知し、小説の中に取り入れる姿勢が小説の面白さを維持しているのだ。知らぬ間に訪れる変化は積極的に受け入れようではないか。

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