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情報の価値はどこにあるのか


2023.12.10


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 テレビのビジネス番組でnoteというweb上の記事投稿サービスのことを知った。驚いたのは、これまでのネット上の投稿による稼ぐビジネスモデルとの明らかな違いだった。投稿記事には値段がつけられており、投稿記事(にある情報)に対して読みたいと思う人(受信者)は金を払って読むということである。当然ながら、その情報が値段に見合う価値があると認められた時にのみ読まれて金が支払われるわけであり、情報の価値は受信者が決めるということになる。読むためには金がかかるので、受信者側では発信者の信頼性や投稿記事の有効性について吟味するはずである。

 番組では、noteでの発信によって(年間)億円単位の収入を得ている人を紹介していた。経済記事の投稿をしている人で、それをサブスクリプション・サービスの形で提供している。経済記事であれば、私も契約している日経電子版などでも読めるはずだが、どこにそれ以上の価値があるのだろうか。それを知ることは情報の価値を知る上で重要である。

 まずは、「その記事に対してニーズがあるか」と言う点である。経済記事ということでは安定的なニーズがあると思われる。「記事の信頼性」については、投稿者が日経新聞の元記者であったという経歴からある程度保証されているだろう。でも驚いたのは「情報発信のスピード」である。新聞よりも早く情報発信することが特徴とのことである。そして、note全般の特徴であるが、「短時間で読めて理解できる」記事の書き方である。最近の読み手の生活パターンに合わせたタイパを意識した表現をすることが重要なのだ。まさに、情報の価値から出発した新たな情報発信のビジネスモデルと言える。

 ネットワーク時代に入って四半世紀が過ぎ、我々は大量の情報を連日受けている。つい、情報はタダ(無料)という意識が働く。そうなれば、受信者は情報の信ぴょう性を確かめる手間を惜しんで、面白そうなものに飛びつく。さらにそれらを拡散させる。デマ(偽情報)や誹謗中傷やヘイト記事は増える一方である。もしも、読むことに金がかかるとすれば、その情報の価値について考え、確かめる意識が湧くかもしれない。

 さて、情報の価値の源泉である「信頼性」「スピード」「理解しやすさ」については揺らぐことはないと思われる。一方で情報に対するニーズについては変動する可能性がある。それもかなり頻繁に、である。

 大学で私の担当している情報関連のある授業では、自分でデータを集めて分析、考察した結果を報告するレポートを提出することになっている。どのようなデータを集めて分析するかは各自の自由である。その時選ばれたテーマを調べてみると、年度で大きな変化がある。昨年までの2年間ほどは健康関係のテーマが多かった。今年(2023年度)は圧倒的に経済関連(お金やビジネス)が多かった。つまり、コロナ禍においては自分の健康が気になり、コロナ禍が明けたら物価の上昇や日本の経済が気になりだしたということである。

 別の科目では、関心のあるデジタル技術がビジネスに与える影響についてのレポートを出してもらっているが、取り上げられた技術は頻繁に変化している。勿論、IOTやビッグデータ、クラウドといったものは数年来変わらずに一定数出ているが、トップに上がるものは大きく変動している。昨年はメタバースが目立ったが、今年は圧倒的に生成AIである。この事実もネット上に飛び交う情報の価値に影響しているはずである。

 ネットワーク時代に生きる我々は、もっと情報の価値に対して敏感になり、価値の高いものには金を惜しまず、価値のないものや害のあるものは排除していく姿勢が必要である。

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