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寒さに最初に反応したのは何


2023.11.19


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 高齢者は気温の変化に気づきにくいとよく言われるが、実は体のセンサーはかなり敏感に寒さに反応していることが分かった。数日前のこと、朝起きたら体が「錆びたブリキのロボット」状態になっていたのだ。ガクガクと音を立てるように歩いて洗面所に行った。この2年ほどは(幸いなことに)腰痛がない。関節の違和感だけが冬の訪れを知らせている。これが軟骨のすり減りというものか。さらに、次の夜には脚がつって痛みで飛び起きてしまった。季節の変わり目では多い現象だ。

 今年は夏が長かったせいで、まだ箪笥の中には夏物の服が詰まっている。さらに、秋に着ようと思っていた服も着ないまま箪笥にある。慌てて冬服を取り出して入れ替えを行った。身体が寒さに反応しているのに、対処するための準備ができていない。そもそも冬の初めに何を着ていたか、どんな掛け布団を使っていたか、思い出すのに苦労する。

 毎日のウォーキングでは、週に一度は県立公園に行く。11月も中旬なのに、水鳥が殆どいない。いつも早めに見かけるカルガモはいるのだが、他の種類のカモは全く見かけない。オオバンは一度も見たことが無い。さらに、モミジは緑色のままで全く紅葉していない。どういうことなのか。もう冬が来ているのではなかったか。秋はどこに行ったのか。そんなとき、どこかから声が聞こえてきた。

「急に気温が下がったからといって冬の準備ができているわけではないんだよ。自分だって、体が錆びたロボットになっているのに、冬の服や布団を準備していなかったじゃないか」。

 まさにその通りである。センサーが反応しても、それに対して行動が変わるまでには時間がかかる。北から渡り鳥が来るのには旅の支度が必要である。もみじだって、紅葉するのには気温が下がるにつれて準備を整えていかなければならないはずだ。となると、心配なのはこのまま紅葉せずに終わるのではないか、ということである。オオバンには遅かれ早かれ会えると期待しているのだが、何年か前に殆ど見かけないこともあったので空振りに終わるかもしれない。

 さて、実は、私の体より前に寒さに反応したものがあった。それは、7年間使っているスマホである。私が錆びたロボットになった前日、バッグにスマホを入れてウォーキングをした。いつものベンチに座ってスマホを取り出した。一瞬画面が出たのだがすぐに真っ黒になり反応しなくなった。このスマホは、気温が10度あたりを下回るとバッテリーが切れてしまう。温めて電源を入れなおすと戻ることは分かっている。でも寒さの中では難しい。結局、スマホをズボンのポケットに入れて体温で温めつつ帰宅した。残念ながら、このスマホは寒さに反応したといってもその後何らかの対処ができるわけではない。私自身が常に体に近いところに置いて温めてやるしかない。いくら精密とはいえ、やはり機械にすぎないのだ。

 初夏の頃には道の右側にツツジ、左側にアジサイが咲き、真夏の前にヒマワリは枯れていた。紅葉しないで冬を迎えるモミジを見ながら、おかしな季節の変化を実感している。

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