引き出しの奥から古いカメオのブローチが出てきた。60年前に父が海外出張のおみやげに買ってきてくれたものである。金具は錆びているものの壊れてはいない。ブラウスに着けてみたところ思った以上に合っていた。孫の七五三のときに付けて行こう。その他にも高価ではないが思い出の品物はいくつか出てきた。場所を取るわけではないので大事に残しておくつもりである。物の価値はそれを手に入れた時の経験の価値を抜きには測れない。
数年前までは「断捨離しなければ」と意気込んでいたのだが、最近はその意欲が薄れた。片付けが面倒なのが大きな理由だが、それに伴って腰痛が起きそうで怖いからである。いっそのこと私が死んだ後で誰かがすべて捨ててくれればよい、くらいに思っている。その代わり、物を買わない、増やさないことに力を入れている。最近は、使って無くなるもの、お腹に収まるものと本くらいしか買っていない。
物以外であれば、手離すべきものはかなりある。気づかないうちに払い続けている無駄なコストである。この2年位の間に複数枚のクレジットカードの解約をした。かなり昔に契約をしたもので、年会費が取られていることを忘れていたからである。これまでの無駄な費用が悔しくてつい歯ぎしりした。でもそれ以上に「本当に必要だろうか」と悩み続けて遂に手離すことにしたものがある。自宅の固定電話と光回線である。
固定電話の解約は、その準備に5年くらいかけた。5年前の時点では、固定電話、光回線、インターネット・プロバイダがセットになった契約をしていた。幸い携帯電話はセットになっていなかった。4年前に固定電話と光回線の契約を別の会社に移して、インターネット・プロバイダを切り離した。あとは、固定電話の解約および光回線でのインターネット環境を無くすことで生ずる問題を解決することだけである。それに3年以上をかけ、光回線契約更新期間に入ってまもなく解約手続きをした。
固定電話は、かかってくるのは詐欺、セールス、アンケートが殆どであることが分かっていたので、数年前から常時留守電にして決して出ないことにした。その間、折り返しの電話が必要だったことは殆ど無かった。同時に、年賀状の連絡先を携帯電話番号とメールアドレスに変えた。電話番号を記入する必要がある書類は全て携帯電話番号のみの記入にした。現在のところ思いつく連絡先には全て携帯電話番号が伝わっているはずである。
自宅の光回線であるが、仕事では殆ど使っていなかった。別途、クラウドSIM Wi-Fiの契約をしていて、仕事場ではそちらを使っている。これはモバイル型なので自宅で使うことも可能である。さらに、携帯電話のテザリング機能も使えるので、Wi-Fiがつながりにくい時には代替手段として十分な働きをしてくれる。と言うわけで、光回線の解約も問題は生じないと判断した。
今後何事もなく済むとは思っていない。そのときは一つずつ解決していけばよい。増やすより減らす方がずっと大変である。それでも時間をかけてそれをしていかなければ、意外なところで無駄な費用を払っていたことに気づいて歯ぎしりしなければならなくなる。
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コンサルティングと研修のサービスを提供します。
所長:石田厚子 技術士(情報工学部門)博士(工学)
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残したいものと手離してもよいもの
2023.10.15