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安定するまで待ってみる


2023.8.6


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 遂に誕生月が来て、後期高齢者医療被保険者証が届いた。市役所からの簡易書留の封を開けて思わず「何これ」と声を出してしまった。今までの(国民)健康保険証の2倍以上の大きさの紙が1枚である。これではカードケースには収まらない。確かにこれまでの保険証は文字が小さすぎて読めなかったので不便ではあったが、財布に付いているカードケースにいつも入れておけたので、ワクチン接種や郵便物受取の際の本人確認にも忘れる心配はなかった。これからは別に保険証入れを用意しなければならない。何より、3か月ごとの定期歯科検診の際にこんな大きい紙を見せるのは後期高齢者であることを周りに知らせるようで恥ずかしい。見た目で分かるって?自分ではまだ若いつもりなのだが。

 すぐに思いついたのは、保険証と紐づけされたマイナンバーカードを使えばいいじゃないか、ということである。しかし、ここにも大きなハードルがあることに気づいた。現在私は行きつけの歯科医院以外に医療機関を利用していない。この歯科医院にはマイナンバーカードを読み取る機械が随分前から設置されている。しかし、それを利用している人を見たことが無い。予約制でそれほど混雑することのない小さなクリニックである。保険証を渡せば一瞬で確認されて戻ってくる。もしもマイナンバーの読み取りでもたついたり、何等かのトラブルが発覚したりしたらスタッフに迷惑をかけるだけではないのか。

 私自身は新しい技術の導入に抵抗を感じない方である。一方で、安定するまでに時間がかかることもよくわかっている。だから、一部の例外を除いては新製品には飛びつかない。その例外は玩具である。犬の鳴声を入力して考えていることを表示する玩具や、人間の話しかけに答えてくれるロボットなど、高額な玩具を購入しては、機能や性能の悪さもあってすぐに飽きて放り出してしまった。それでも、生活に大きな影響もないので無駄遣いを反省することで済んでいた。

 スマートフォンを使うようになったのは日本にiPhoneが入ってきた次の年くらいである。ただし自分で購入したのではなく、会社から貸与される携帯電話を試験的にiPhoneにする希望者募集に応募したのである。2年後に自分の携帯電話をiPhoneに変更した。それ以降、10余年のiPhoneユーザである。結果的には安定する状態を待っていたことになる。

 新しいシステム、特に多くの既存のシステムを組み合わせて構築せざるを得ない複雑なシステムにはバグがあって当然だということもよくわかっている。その解決策としては、新システムを一から構築して古いものと一気に入れ替えるか、古いシステムからの移行の問題を一つずつ潰していって安定するのを待つか、の2択しかない。すでに様々なシステムが動いている状況でそれらを一斉に止めて新しいものに一気に変えるのは非常に難しい。となれば、後者しか選択肢はない。つまり、マイナンバーカードで保険証を使うのは、マイナンバーカードのシステムが安定するまで待つしかないということになる。

 紙の保険証が使える限りは使うしかない、という結論になった。幸いなことに、誰かから頂いた保険証入れが見つかったのでこれに入れてクリニックにいくことにしよう。

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