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怪我の功名


2022.12.25


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 何日か前、数個の玉ねぎが冷蔵庫の冷凍室に放り込まれているのに気づいた。うっかり野菜室と間違えて入れたようだ。カチカチになった玉ねぎを野菜室に入れたら、次の日には柔らかくなってしまった。もう捨てるしかないのかとネットを検索してみると「玉ねぎは冷凍すると甘みが増し、煮込む時間も短縮される」という記事が見つかった。結果として、捨てることなく却って美味しく食べることができた。

 こんな風に失敗して落ち込んでもそこから回復して却って良くなることを言い現わした諺があるはずなのだが、思い出せない。またもGoogleさんのお世話になって「怪我の功名」にたどり着いた。ところが、諺にあるくらいなのに、生活の中で経験することは殆ど無いということにも気づいた。「棚からぼた餅」や「瓢箪から駒」と同じように、自分の努力によるものではなく、運任せや環境の変化によるものだからだろう。

 私が思い出した「怪我の功名」はたった一つだった。丁度一年前の年の暮れ、滋賀県の琵琶湖一周の旅を計画していた。ところが大雪のため予約したホテルにアクセスすることができず、断念せざるをえなくなった。そのリベンジのため、今年の4月初めに同じルートの旅をした。その結果どの地域でも満開の桜を満喫することができ、忘れられない旅となった。こちらは環境の変化による思いもよらない幸運といえるだろう。

 私が「怪我の功名」をイメージで表すとすると、「V」(V字回復)ではなく「✓」(ホッケースティック)である。同じようなイメージがビジネス界では多く見られる。例えば、コロナ禍の影響で落ち込んだ業績がウィズコロナでコロナ前の状態まで持ち直したのは「V」だが、リーマンショックの影響で大幅な赤字を計上した企業がその後の経営改革のお陰で大幅に業績を拡大したのは「✓」となる。「V」よりも「?」の方がずっと大がかりで抜本的な取り組みを必要としている。しかも落ち込んだところからの回復には多大なエネルギーを要する。運任せや環境の変化待ちでは決してないということである。

 私自身の日常生活においては、「✓」どころか「V」すら難しい。「レ」(やや回復)が良いところである。それでも何もしなければ下がっていくばかりである。少しでも引っ張り上げる努力はしていかなければならない。例えば、私の6台のPCのうち一応まともに動くのは2台だけ、4台は動かなかったものを「動きはおかしいけれど何とか動く」、「運が良ければ動く」ところまで回復させたのは「レ」と言えるかもしれない。あまり意味がありそうには思えないけれど、廃棄しなくて済んでいるので地球にやさしいということで満足である。これでもかなり努力したことだけは強調しておきたい。

 コロナ禍からウィズコロナにビジネスや生活は変化している。例えばコロナ禍により遅れていたデジタル化が加速したのを「怪我の功名」と捉えてしまうといずれは元に戻ってしまう可能性がある。ビジネス界の「✓」は「怪我の功名」とイメージは似ているが全く違うのだ。せっかくの機会なのでビジネス戦略やプロセスを抜本的に変革し、「V」(V字回復)に止まらず「✓」(ホッケースティック)を狙うべきだろう。それは可能だと信じている。

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