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自宅でできることの限界


2021.08.08


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 午前中の早い時間帯だというのに、もう宅配便が届いた。重い物なので玄関の中に入れてもらった。一昨日ネットで注文したダイニングテーブルである。孫たちが来たときに一緒に食事ができるようなダイニングテーブルが欲しいと、コロナ禍の前からずっと思っていた。自分と子供たちのワクチン接種が完了し、この夏休みに孫たちが来ることを見越して急いで入手することにしたのだ。2人用なので1メートル四方の板状に梱包されている。一仕事終えたところで、いよいよ組み立てを始めた。人一倍不器用な高齢者の私に果たしてできるものかと心配だったが、梱包の段ボールから中身を取り出し、ネジをレンチで締めるだけの簡単な作業をし、1時間ほどでテーブルとイス2脚が完成した。ネットで見たとき以上に部屋にマッチしていると感じ、大いに満足した。

 ひとり暮らしで高齢者の私がコロナ禍の自粛生活を比較的快適に暮らせているのは、ネット通販のシステムと宅配業者の方々のお蔭である。私自身のネットでの買い物は加速している。生鮮食料品以外は殆どネットで購入する。店舗に行かなければ密は避けられるし、探す時間も短縮できる。何より、購入者のレビューが役立つ。今回の買い物も、組み立てが楽かどうか全てのレビューを読んで確認した。書籍ももちろん必ずレビューを読み、自分で立読みして興味を持ったものでも購入しないことがある。常備薬もネットで買うのでドラッグストアにもずっと行っていない。 製造技術と物流の進歩により自宅でできることがどんどん増えている。レストランでしか食べられなかった料理がレトルトで気軽に楽しめる。自宅はオフィスにもスポーツジムにもなる。3Dプリンタで必要なものを作ってしまう工場にだってなる。

 一方で、自宅でできることの限界も強く感じている。自分の安全を守ること、とくに医療である。6年前、夫の急死により一人暮らしとなった。健康でもあるし、仕事も持っていたので不安など感じずに生活を続けていた。ところが2年後、夜中に息もできないほどの激しい腹痛と嘔吐に見舞われ、自ら救急車を呼んで病院に担ぎ込まれた。2昼夜にわたる七転八倒の苦しみの挙句、開腹手術をして助かった。腸閉塞だった。その間、遠方に住む子供たちには仕事を休ませるなど大変迷惑をかけた。その後、これから先ずっと続く一人暮らしのリスクを考慮して、安心安全をお金で解決することにした。かなりコストはかかるが、現在は24時間見守られている状態にある。その分、無駄な出費は極力カットしている。

コロナの感染者数増大はとどまるところを知らず、医療ひっ迫が目前に迫っている。その様な中に打ち出された自宅療養の規準というものがどうしても納得がいかない。酸素吸入が必要になるまで自宅にいるということがどれほど不安であるか容易に想像がつく。絶望的な気持ちにもなるだろう。我々はワクチンの副反応にすら怯えるほど体の変化には敏感であり、弱いのである。

 現在のコロナ禍は、人間とウィルスの生死をかけた戦いである。最終的には人間が勝つと信じているが、それまでの犠牲が大きすぎる。今回のコロナが収束しても次のパンデミックがいつ来るか分からない。早く医療体制を立て直さないと人類の将来は危ういことになる。



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