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長い夏休みをどう過ごそうか


2021.06.27


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 私が非常勤講師をしている大学では、東京オリンピックの始まる前に前期の授業が全て終わる。そのために、4月に入ってすぐに授業が始まり、GWの連休をつぶして授業を続けてきた。お蔭で、7月の中旬には期末試験を終えることができ、あとは成績を付けるだけである。パラリンピックが終わって後期の授業が始まるまでが夏休みである。さらに嬉しいことに、私自身は夏休みが始まる時点ではコロナワクチンの2回接種を終了しており、免疫がついているはずである。しかし、私の心はなぜか晴れない。

 全く悩む必要などない、何でも好きなことをすればよいではないか、と思えるのであるが、そうはいかないのである。したいことは沢山あるのだが、それをしようとするとどこかにひっかかりが出てくる。例えば、一番したいことは「子供たち、孫たちと会いたい」であるが、コロナワクチンを打っているのが私一人では、みんなで集まることはできそうもないし、会食などとても無理だろう。次が「旅行」であるが、首都圏から地方に出かけるのは迷惑かもしれないと躊躇する気持ちがある。さらに、報道によれば、観光地や交通機関の夏休みの予約が激増しているようで、密なところに飛び込んでいくのにも抵抗がある。

 やはり自宅で自粛を続けるのがよいのか、とも思うのだが、問題は暑さである。昨年の夏は、熱中症が怖くて1か月間、毎日のウォーキングを止めてしまった。階段の昇り降りなどで足腰の訓練はしたものの、9月になってウォーキングを再開すると、めまいに悩まされるはめに陥った。さらに、難しい本を買い込んでしっかりと読書に励もうとしたのだが、部屋の中での温度管理、こまめな水分補給をしながらの読書でも、頭に入るスピードの低下は否めず、さしたる成果は得られなかった。今年も同じことは起きかねない。

 最後の砦は自宅でのんびりとテレビを観ることになるのだが、ここに大きな問題が横たわっている。私は、大のスポーツ嫌いなのである。興味がないということもあるが、何より感動を押し付けられることに耐えられない。例えばニュース番組などを見ていて、暗いニュース、深刻な話題の後で、暗い顔をしたキャスターが急激に笑顔になって「ここからはスポーツです」、と言い始めると、すぐにチャンネルを変えるかテレビを消す。ここからは全ての嫌なことを忘れて感動しなさい、と強制されるような気分になるからである。

 なぜか世の中の人たちは、全ての人はスポーツ観戦が好きで、日本人が勝つことにものすごく感動するのが当たり前で、苦労話に涙を流すものだと思い込んでいるようなのだ。アメリカで活躍中の日本人メジャーリーガーがホームランを打っただけで、全てのテレビ局があんなに長い時間を使って同じ映像を流すくらいだから、オリンピックになったらどうなることやら・・・。多分、1日中、全てのテレビ局がオリンピックの中継をし、ニュースで「感動のシーン」を繰り返し流して同じシーンを何度も見せられ、解説を受けることになるのだろう。どこか一つの局でいいので、再放送でいいので、オリンピック以外の番組をやってほしい。さもないと、うっかりテレビを観ないようにリモコンを隠すしかなくなる。 この夏は一人でひっそりとプチ旅でも楽しむことにしようか。密を避けながら。



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