72歳にして初めて国民健康保険に加入することになった。70歳までは会社(企業)の保険組合、および大学の共済組合の健康保険加入者だった。その後2年間は共済組合の保険に任意加入していたが遂に期限満了となり、資格喪失証明書が届いたからである。手続きのために市役所に行くのには抵抗があった。この時期、沢山の人が様々な手続きのために役所に押しかけて密になっているのではないか。これまで人との接触を極力避けてきたのに。
まずは市役所のHPで国民健康保険加入手続きの方法を調べる。資格喪失証明書とマイナンバーカードがあればすぐできる。しかも、徒歩で10分ほどの所にある出張所で手続きできるらしい。半信半疑で出張所に向かった。扉を開けると、密どころか誰もいない。職員が私を見つけて窓口へと手招きした。用件を伝えたらすぐに手続きしてくれた。実は、この出張所に来るのは2回目である。昨年夏にマイナポイントの申請をしようとしてパスワードの入力に失敗してロックがかかり、解除と再登録をしたのである。このときも誰もいなかった。やはり、HPで対策を調べてすぐに駆け込んだのだった。
私はいわゆる独居老人である。何かあったときに身近に頼れる人はいない。しかし、孤立しているとは思わない。その最大の理由はインターネットが使えるということである。不特定多数とつながっていれば誰かが助けてくれる。あるいは助けてくれる人を教えてくれる。そのために、インターネット回線や複数のパソコン、スマホをいつでもどこでも使える状態にしている。もちろんそれだけで孤立していないとは言えない。夜中に突然倒れて動けなくなることだってある。こちらは、安全を確保するサービスを買うという形で解決を図った。
孤立と並行して語られることに孤独がある。孤独は必ずしも悪くない。望まない孤独、それを感じることが悪いのだ。私自身は孤独が好きである。決して人とのコミュニケーションが苦手だからではない。50年近く組織で働いてきて結構楽しかったし、親戚、ご近所、ママ友との付き合いで悩んだことも無い。飲み会も大好きである。ただ、「プライベートに踏み込まれたくない」という気持ちが強い。だから、人のプライバシーに踏み込まないようにしている。結果として常に他人との距離をやや長めに取るようになった。現在のソーシャルディスタンスは、実は私には心地よいとすら思えるのだ。今は孤独を楽しんでいる。
自宅から1時間くらい歩いたところにあるショッピングセンターの本屋に、立ち読みをしに行った。平日なのに若者が沢山いる。もう春休みなのか。マスクはかけているが数人が固まって大声でしゃべっている。郊外型レストランの駐車場も車が多くなった。どこが緊急事態なのかと思う。私は、常に集団や家族連れから距離を取って歩く。外食も決してしない。一人だからそれができる。安心こそ感じるものの寂しいとは思わない。
孤立していなければ孤独を楽しむ心のゆとりができる。しかし、これだけは強調したいのだが、孤立を無くすのにはコストがかかる。私自身は、光熱費、通信費、衣料費、食費などを徹底的に見直して切り詰めることで、脱孤立の費用を捻出している。100歳までにはまだ間があるのだ。孤立を防ぐことにこそ公助の出番があるのではないか。
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コンサルティングと研修のサービスを提供します。
所長:石田厚子 技術士(情報工学部門)博士(工学)
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孤立しなければ孤独を楽しめる
2021.03.21