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OSを丸ごと入れ替えてみたら


2021.02.21


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 このコラムで何度か登場した暴走パソコンのその後である。最初キー入力ができなくなり、外付けキーボードで入力したら暴走し、結局、Office365をアンインストールしてWindowsの機能を極力使わないことで何とかなだめながら使っていたノートパソコンである。しかし、半年間でやったことと言えば年賀状の印刷くらいである。これではまずい。

 3年前にVirtualBoxという仮想環境を作成してその上でUbuntuというLINUXの一種を動かしていたことを、最近になって思い出した。それができればPythonのプログラミングの勉強くらいはできるのではないか。そう思ってやってみることにした。記憶をたどりながら数時間かけてインストールを完了し、ようやく仮想環境の上でUbuntu(LINUX)が動きだしたときはひとまずほっとした。その時、Ubuntuの画面が3年前とは大きく違うことに気づいた。バージョンが上がって、何だかすごくおしゃれで使いやすくなっている。

 ネットや書店での立ち読みで新しいUbuntuの機能を確認し、決心した。「もう暴走するWindowsのお守りなどしていられない、Ubuntuでいいじゃないか」。暴走パソコン君のOSを丸ごと入れ替えることにしたのだ。データのバックアップは既にとってあるので全てが消えても構わない。怖いのはパソコン自体が動かなくなることだけだ。(十分あり得る)

 アマゾンでUbuntuのガイドブック(インストール用DVD付)を購入し、頭の中でシミュレーションしてから早速インストールを実施した。パソコンのDVDドライバーからうまくDVDを読み込んでもらえずもたついたが、3時間半でインストール、ネット接続、Ubuntuのバージョンアップ、メールの送受信、動画の視聴まで確認できた。再起動してUbuntuの画面が出たときは感動だった。しかし、驚くのはまだ早かった。

 そもそもの発端はキーボードのキーが反応しなくなったことである。その後の暴走はWindowsのせいだが、キー入力はハードウエアの問題ではないかと思っていた。しかしOSを入れ替えたら、外付けキーボードを使わなくとも本来のキーボードで正しく入力ができるようになっていたのである。これは想定外だった。もう、プラスチックのトレイとまな板で作ったカバーをかぶせて外付けキーボードを乗せ、ガタガタするのを片手で抑えながら入力するなんてことは必要がないのだ。まるで、クララがハイジの励ましで自分の足で立てたときのような感動である。

 パソコンを開いて電源を入れてから赤紫色のUbuntuが立ち上がるまでの時間は短い。まるで新しいパソコンを手に入れた気分である。もっと早く替えるべきだった。もう二十数年間どっぷりとWindowsにはまっていて、パソコンと一体になっているように感じていた。だからこそWindowsを止めることには思い至らず、仮想環境を作ってその上でUbuntuを動かそうということしか思いつかなかったのだ。

 ここから大きな教訓が得られた。暴走するトップをなだめながら組織を運営するのは大変な無駄である。トップを入れ替え、組織を根本から作り直すことで問題が一気に解決することがある。カバーをかぶせて胡麻化すことは一瞬の助けにはなるが解決にはならない。



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