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人それぞれやりたいことには順番がある


2020.05.24


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 私には5つの長めのウォーキングコースがある。それに県立公園の散歩を加えれば1週間は飽きずに運動ができる。その一つのコースでは、家から15分ほど歩くと洋食屋さんに差し掛かる。周りに飲食店は無い。いつも2,3台の車が止まっている。のぼりが立っていて、各々に「スパゲッティナポリタン」「オムライス」「カレーライス」「ハンバーグ定食」とイラスト入りで書かれている。入口には沢山のメニューが書かれた看板が掲げられているが、それを読んだことはない。私にはのぼりだけで十分である。「さて今日はスパゲッティナポリタンにしよう」と考えるだけで、トマトケチャップの甘酸っぱい味と香り、ちょっと柔らかめの麺の歯ざわりまで十分に感じられる。脳内でそれを楽しみながら歩き続ける。他のメニューを選んでも同じように、その味も香りも全て頭の中で再現できる。もう少し歩くと牛丼店がある。その看板を見ながら、さらに牛丼も食べることにする。脳内だけで。

 テレビの大食い番組を見るのが大好きである。ちょっと口に入れただけの食レポは好きではない。余ったのはどうするんだろうと気になってしまう。完食してもらいたい。それで私は満腹し、幸せな気分になる。他にも、海産物、とくに明太子などの通販番組も好きである。あんなにたくさん買っても家族であっという間に食べてしまうのだろうな。まるで自分のことのように幸せな気分になる。もちろん味は十分想像できる。だから自分もその家族の一員として食べている気持ちになれる。

 いつかまた食べてみたいと思う。その「いつか」はかなり先のことだろう。今は塩分、糖分、脂質を極力控え、大好きなイカや魚卵類、レバーなどを口にしないようにしている。だから、想像の中でしか美味しいものは食べられない。想像できない未知の料理、例えば高級な中華料理、タイ料理などは全く食べたいとは思わない。その「いつか」は、死期を悟ったときである。そのときはもう、「塩分」「糖分」「脂質」「コレステロール」のことなどどうでもよくなっているはずである。好きなものを好きなだけ食べてやろう。それまでにやりたいことは沢山ある。まだ病気になるわけにはいかない。問題は、それまでに食欲が残っていたら、胃腸が丈夫だったら、という条件付きだということである。

 緊急事態宣言が解除されたら何がしたいか、は人それぞれ違っているだろう。飲み会をしたいと思っている人も多いかもしれない。旅行を含めて外出をしたい人も多いだろう。何を大切にするかも人それぞれ違うはずである。自分の考えを人に押し付けてはいけない。他人のやり方を批判するのもおかしい。優先順位は人それぞれ違ってよいのだ。

 私が最初にしたいことは、家族に会うことである。子供、孫、母親。会って無事を喜び、これからもコロナに感染しないことを約束しあう。それから夫の墓参りである。都心に墓があるので訪れるのを控えている。それから国内の一人旅をしたい。でも、最後に緊急事態宣言が解除されるだろう関東圏からの旅行客は歓迎されないかもしれない。それなら来年まで待とう。居酒屋での飲み会は最後である。怖がりの私は人との距離が近い所にはしばらく行けそうにもない。その分、自宅での飲酒量が増えないように気を付けよう。



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