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良識的な行動の裏に潜むもの


2020.04.05


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 新型コロナウイルスの影響で家に引きこもる日々が続く。フルタイムの仕事を持たない身にはそれほど生活の変化はないはずなのだが、運動不足と塩分・糖分・脂肪への警戒心のゆるみから血圧が心配になってきている。あまり引き締めすぎると鬱になりそうで。

 コロナウイルス感染が騒がれだした2月の時点では、どちらかというと重症化しやすい高齢者がツアーなどに行くことに批判的な目が向けられ、若年層は被害者と見なされる傾向があったように思える。ところが、3月の下旬になると、感染しても症状が現れない、あるいは軽症の若年層が活動を自粛しないために感染が広がる、という意見が広がり、高齢者は被害者であるという雰囲気に変わった。テレビに映し出される若者の映像がそれを強めている。しかし、これまでの自分で見聞きしたこととは違うような気もする。

 2月から3月にかけて週1回は往復6時間の公共交通機関を利用しての移動を続けてきた。通勤時間帯を避けていたので、ほぼ全世代の乗客と遭遇していたが、マスクの装着率は若年層も高齢者もほぼ同じだった。マスクをかけない高齢者も少なからずいたということである。「自分の周りには罹った人もいないし、実感がわかない」という若者の言葉はよく聞くが、「あれは都会の話で、こんな田舎には来ない」と言っている高齢者だっている。首都圏であっても都心でなければ田舎と思っている人は多い。つまり、世代を問わず、自分は罹るはずはない、あるいは、罹っても重症化しない、と思っている人はかなりいると思われる。問題は、他人に感染させる危険性まで思いが至っていないことである。

 現段階では、「良識ある行動」が求められているのだが、ここでとくに高齢者でよく聞く言葉がある。「自分は出かけたいんだがカミさん(妻)が『ウイルス持ち込むな』とうるさくてしかたなく家にいる」という言い訳である。独居老人であれば「子供たちがうるさくて」になる。なぜか「自分の意思で」とは言わない。強がってみせたいのか。ところが、若年層でも、全く逆のことを言っているようだが同じような言葉が聞こえる。「要請でしょ、だったら別に従わなくてもいいじゃん」という言い訳である。これは裏返せば「禁止されたらしかたなく従うよ」というメッセージにもとれる。つまり、自分の意思で行動するのは避けて、何かに従わされているという姿勢を取りたい、ということである。つまり「カミさんがうるさくて」と何ら変わらない言い訳である。

 自分の意思で行動することを避けたい、結果をだれかの所為(せい)にしたい、というのは日本人の特性なのだろうか。つまり、自分では責任を取りたくない、誰かに指示されれば(しぶしぶ)それに従う、うまくいかなければ指示した人を攻撃する、ということである。であれば、政府は早急に「緊急事態宣言」を出すべきだろう。批判や攻撃は受けるかもしれないが、口うるさいカミさんやサンドバックになったつもりで叩かれればよい。それで国民が救われるのであれば幸いである。

 「人類と科学の400万年史」(河出書房新社 2016)を読み終えた。帯にある「人類はなぜ科学を生み出せたのか?」は示唆に富んでいる。自分の意思で思慮深く行動したい。



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