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不要不急の判断基準


2020.03.29


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 ああ、意味が分からない。頭がパンクしそうだ。こんなことを考えながら読んでいたのが『数学で生命の謎を解く』(イアン・スチュアート著 Softbank Creative 2012)である。実は、既に何年か前に読んだ本なのだが全く内容を覚えていない。しかし、つい最近読み終えた『生命の<系統樹>はからみあう ゲノムに刻まれたまったく新しい進化史』(デイヴィッド・クオメン著 作品社 2020)との関連があるのではないかと本棚から引っ張り出したのである。苦しみながらも、今回は何とか内容を理解できるようになっていた。

 実は、『数学で生命の謎を解く』に疲れると別の本に手を出していた。『9つの脳の不思議な物語』(ヘレン・トムスン著 文藝春秋 2019)である。帯に「世界中の奇妙な脳を持つ人々に会いに行った!」とあるように、科学ジャーナリストである脳学者の書いたドキュメンタリーである。内容については想像にお任せするが、とても興味深く、あっという間に読み終えてしまった。

 新型コロナウイルスの影響で外出を控えている状態の中で、読書は欠かせない生活の一部である。だから、大型書店にはどうしても足が向く。立ち読みをし、読みたい本を慎重に選んで購入する。Amazonで購入してもよいように思うが、立ち読みしてどうしても欲しくなる本は満足度が違う。先日は欲しい本がありすぎて選ぶのに迷った。それにもう一冊加えたのが旅行ガイドである。鉄道を使った一人旅を思い描いて、(いつ行けるか分からないので)仮想的な時期を設定して、鉄道地図を広げながらルートを決め、時刻表を調べる。ガイドブックにあるような海鮮丼を食べたいな。お昼ごろに着くようにするためにはどの列車がいいだろうか。考えていると顔がほころぶ。桜の開花に合わせて気が緩んだのかもしれない。もう一度行動を見直す必要があるのかな。

 現在の悩みの種は「不要不急の外出を避けること」である。重要でなく急ぎでない、の基準は何なのだろう。私は、事情があって毎週片道3時間かけて2つの地点の往復をしている。人によっては重要な用事とは言えない、事情を話して誰かに頼んでしまえばよいことかもしれない。しかしそれができない。人込みを避け、わざとローカルな路線を選んで移動することで極力感染のリスクを減らすことが精いっぱいの対策である。2つの地点の移動には必ず東京都を通過しなければならない。(勿論、とんでもないルートを使えば不可能ではないが。)もしも東京がロックダウンされてしまったら、私は2地点のどちらかに留め置かれることになる。この場合の不要不急の判断基準は「東京がロックダウンされるか否か」に依存している。では、書店に行くことはどうなのか。さらに全国的な外出禁止になったとき、食料調達以外は不要不急の行動になってしまうのだろう。

 不安に駆られる中、4月が近づいてきた。さて、私が非常勤講師をしている大学は予定通り授業が始められるだろうか。この分だと8月も授業がありそうである。

 唯一の救いは、私が濃厚接触者になりうる人のいない独居老人である、ということだろう。毎日独り言をつぶやきながら声が出ること(しゃべれること)を確認している。



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