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危機は働き方を進化させる


2020.03.01


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 もう3月になろうとしている現在、新型肺炎(新型コロナウィルス)の感染拡大は止まるところを知らない。これはテレビや新聞の報道で知るところであり、私自身は正直なところ実感がわいていない。フルタイムの仕事はリタイアしていて通勤がないし、公共交通機関の利用も多くの乗客がいない時間帯しか利用していないし、塩分・糖分・脂肪を避けるために外食をしないので飲食店にもここ1か月は行っていないし、病院もジムも無縁である。必要な物はネットで買っている。行くところといえば書店ぐらいだが、幸か不幸か書店にも人はいない。

 先週、一か月ぶりに孫たちが遊びに来た。全く普段と変わりなかった。休みの日には公園で遊んだり、ファミレスで食事したりしているようだ。子供たちも普段通り通勤し、普段通り仕事をしている。報道と現実のギャップには驚かされる。しかし、危機はひしひしと迫っている。目に見えないウィルスはすぐそこに来ているかもしれない。

 このような中、ようやく在宅勤務をする企業が増えてきた。これだけインターネットの普及が進んでいる現代である。私のように家に引きこもっていても、買い物はできるし、自治会の仕事はできるし、大学の新学期の準備だって進められる。授業だってやりようによってはネットで行うことは可能である。この機会に大企業だけでも在宅勤務を徹底的に推進したら、通勤も必要最小限に抑えられ、感染の広がりも緩和されるだろう。

 思い起こせばインターネットが普及し始めた25年前、私の勤めていた会社では、小さな子供を抱えた女性社員の在宅勤務を実験試行したことがあった。私自身は子供がすでに中高生になっていたので関係なかったが、ちょっと注目したものだった。結局実験だけで終わったように記憶するが、当時のインターネット環境では仕事をするのは難しいことは明らかだった。もちろん、セキュリティへの関心も薄かった。現在のネット環境は違う。高速の通信ができ、機器の性能が上がり、セキュリティ技術も進歩している。それなのに、なぜかテレワークが進んでいない。25年前と同じように通勤電車で通い、人が集まる会議や打ち合わせは減らない。そもそもテレワークを行うことがニュースになっている。おかしい。

 人間はどうしても現状維持をしたがる。変えるためにはエネルギーがいる。だから現状維持した方がよい理由を探す。変化することの効果を定量化することを要求して、却下の理由を作る。これでは変化のしようがない。その最たるものが、新卒で入社し、定年まで大過なく勤め上げることを目標とした働き方だったのではないか。もう時代は変わったのだ。変化しなければ進化しない。新型肺炎の感染拡大は国家的な危機である。今こそ働き方を変えるときではないか。出来ない理由を挙げるのではなく、できる方法を考える。「うちの職場では無理ですね」と答えるのではなく、「こうすればここまではできる」というところから始める。これを乗り切れば、きっと本当の働き方改革が実現するはずである。

 オリンピックも開催が危ぶまれていると聞く。この際、観客なしでネット配信のみとしてはどうか。世界中の人たちが自由に安全に観られたら素晴らしいではないか。



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