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素人の感覚と報道のギャップ


2020.02.23


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 今年(2019年から2020年にかけて)の冬はインフルエンザの流行が少ないな、と気づいたのは正月休みを過ぎた頃である。大学の非常勤講師として担当している数学の授業では、年末が近づいてもマスクをしている学生がいなかった。年明けの期末試験でも病欠は無く、マスクをしている学生が見当たらなかった。例年であれば、この季節、学生の多くがマスクをしていたはずである。期末試験に発熱して追試を望む人も必ず存在した。一年前は、ほぼ全員がマスクをし、机の上にポケットティッシュを積み上げている学生すらいた。大学だけではない。1月の下旬までは、電車内でもマスクをしている人は少なかった。せき込んでいる人も殆ど見かけなかった。明らかに暖冬のせいだろう、と思った。私自身も今年は例年より薄着だし、手袋をして外出することも殆どない。

 気になってインフルエンザの患者数を調べてみた。厚生労働省のプレスリリースを見ても、東京都感染症情報センターのインフルエンザの流行状況の資料を見ても、明らかにこの冬の患者数は例年に比べて大幅に少ない。しかし、世の中は新型コロナウィルスの感染の報道が主体で、インフルエンザについては「新型コロナウィルスの感染予防のためにマスクや手洗いなどを行っているため流行が抑えられている」との報道が時々なされるだけである。新型コロナウィルスが騒がれる前にインフルエンザの流行が抑えられていることが見えていたはずなのに。暖冬のせいだということも専門家には分っていたはずなのに。

 昨年からヒートアップしている話題の一つとして、「高齢者も働くべきである」というものがある。収入があることで長生きに備えられる、年金をできるだけ長く払い、もらう時期を後ろ倒しにすれば若い人に迷惑をかけない、働けば健康にもよい、と「働き続けることはよいことだ」のオンパレードである。そこからが問題である。働きたくても働く場がない場合はどうすればよいのか。企業が働く場を提供すればよいのか。しかし、「働くこと」は「存在すること」ではない。企業は高齢者のお世話をする保育園ではない。企業の業績に貢献するものを生み出さない限り「働く場」を作ることはできないだろう。これは、65歳まで企業で働き、70歳まで専任の大学教員として働いてきて、現在は非常勤講師の仕事が少しあるだけの身として実感していることである。

 「高齢者も働くべきである」に関するマスコミの報道には、「こんなに頑張っているスーパー高齢者がいる。あなたもがんばれば働く場はある。起業もできる。問題はやる気を出すことだ」というメッセージがあふれかえっている。裏返せば「働かないのは働く気がないからだ」ということになってしまう。でも今不足しているのは、これまでなかった全く新しい発想と技術で新たなものを生み出せる人材であるのは確かである。普通の人ができる仕事はいずれロボットがやってしまうだろう。その方がコストパフォーマンスを上げられるからである。何万人、何十万人に1人のスーパー高齢者が全てにあてはまるわけではない。

 恥を忍んで言えば、ITの専門家として50年近く働いてきた私でも、今からAIの専門家として働くことなど無理である。十分働いてきたのでもうゆっくりさせて欲しい。



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