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地図にない道


2020.01.19


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 私にとって、毎日1時間半のウォーキングは健康長寿のための大切な習慣である。コースとしては愛犬が生きていた頃の散歩コース、県立公園の周囲および内部、など決まったパターンが多かった。最近になってそれにも飽きてきた。そこで、2019年から2020年に至る年末年始から、何か目的地を決めてその場所を目指して歩くというチャレンジを始めた。

 起点を「仕事場」(隠れ家)とし、片道1時間以内で行ける場所を目的地候補とすることにした。市内の地図を広げて調べたところ、大きな駅の周辺と郊外にあるショッピングモールやショッピングセンター3か所が、いずれも各々片道50分ほどで行けることが分かった。

そこで「ビジネス、AI、脳科学、進化に関する品揃えの豊富な大型書店を見つける」を目的とすることにした。  2019年の年末にはA駅に隣接したショッピングモールにある大型書店が私のニーズにぴったりであることを発見した。B駅の書店は残念ながら前者に及ばなかった。Cショッピングモールの書店はあまり広くなかったが、そこには面白いグッズの店がいくつかあった。

 A駅に行く際は、線路に沿った単調な道を50分歩き続け、1時間ほど立ち読みして本を購入し、また単調な道を50分かけて戻るということになる。それにも飽きたので、地図を広げて別のルートを探してみた。何とか行けそうだったのでスマホだけを頼りにふらりと出かけた。しかし、頭にインプットしたはずの地図とは全く違った道ができていた。

 まず、地図にはなかった大規模な公立中学校がどんと現れた。車がその傍の新しくできた道路を走っていくので、私も(歩道が狭いので車に気をつけつつ)歩いて行った。曲がった道が別の自動車道路と交差するところに来た頃には、方向音痴の私はどこをどう歩いているのか全く分からなくなった。広そうな道を歩き続けて再び十字路に差し掛かった時、遂にスマホのお世話になることにした。A駅の方向に私立大学があるようなので、まずはそこを目指すことにした。スマホを見ながら曲がりくねった、しかもできたばかりの道を歩き、ようやくその大学にたどり着いた。そこからスマホの指示通りA駅を目指した。しばらく歩いたところ、見覚えのある保育園が見えてきた。ようやくいつもの道に出ることができたのだ。帰りは、最初からスマホのお世話になりつつ全く別のルートで戻った。

 歩いた地域は、急速に新しい街が作られている。人が増えれば学校もでき道もできる。紙の地図に無くとも、グーグル・マップで調べると新しい道も建物も表されている。新ルートでの散歩はできても、一体どこをどう歩いたのかの記憶が曖昧なのは気持ちが悪い。次の日、逆向きにルートを辿って自分の頭に新しい地図を描き、すっきりさせた。

 地図に無い道を歩くのは人生と似ている。辿り着いた先は平凡な場所であっても辿った道は愛おしい。それがいつか誰かにとっての道として目の前に現れる可能性だってある。

 科学の進歩も地図に無い道を歩く点では同じだ。大きな成果に結びついて注目を浴びれば辿った道も地図に載るが、そうでない場合は忘れ去られるかもしれない。しかし、どんな目立たない道であっても、将来の誰かのために記録しておくことは必要である。



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