「最期まで本に囲まれ 本を読むことを楽しみにしていた故人を偲び お送りします」
これは、図書カードに添えた私のメッセージである。実は、夫は末期がんであることが判明して3週間で逝ってしまったので、ほぼ急死に近かった。その後の様々なことを、周りに相談する人のいない私は一人で考えながら行った。葬儀、お墓の購入、遺産相続の手続き、住んでいる家と土地の相続による名義変更、などなど、(税理士など)誰の手も借りず、全部自分で行った。その際、「夫は何を望んでいたのか」「子供たち、そして夫の兄弟などの親しい人たちには何をしてあげれば悲しみが軽減されるだろうか」を真っ先に考えた。その次に考えたのが私自身の思いだった。
家族葬にしてお香典は頂かないことにしたが、親戚からは届けられた。額はまちまちで、香典返しをどうすればよいか迷った。そこで、思い切ってお香典をユニセフに寄付した。そのことを49日の挨拶状に書き、それに図書カードを添えて送った。亡き夫も世界の子供たちを救うためであればきっと理解してくれるだろう。図書カードとそれに添えたメッセージで夫の思いは伝わるだろう。私は自分で考え抜いた結果行動したので、納得することができた。もしも誰かから説明を求められたら、その意図や趣旨をはっきり答えることができる。
相続に関する様々な書類の作成、それに伴う文書や情報の入手は、市販の書籍とネット検索で情報を得ながら行った。その際、なぜこの情報が必要なのか、何が必要で何が不要なのかを考えていったところ、作成する書類の意味、どう書けばよいのかが自然に分かるようになった。その結果、全てのことは滞りなく、あっけなく済んでしまった。
自分自身で考えて行動するのは、最初から他人に判断を任せたり、周りの人の意見やネットの情報などを総合して決めて行動したりするより、結果に対して納得がいく。勿論、一人だけで全てのことが判断できるわけはない。専門家の意見や過去に経験したことのある人の意見を聞く必要のある問題は存在する。しかし、そこに至るまでの部分、つまり、最終的にどうあってほしいのか、そのために何をすべきなのか、実現するためにはどのような方法があるのか、そのために何が必要なのか、などをとことん自分で考えた上で、自分では判断できない部分を絞り込む必要がある。その上で専門家や有識者にそれを伝えれば的確なアドバイスが受けられる。私はこれまで、多くの局面をそうやって乗り越えてきた。結果について自分で納得できるだけではない。他人にもそれをうまく伝えられる可能性が高まる。
仕事の上では、最初から自分の判断で進められることは少ない。企業に勤めていた頃、営業活動の一環でプレゼンテーションすることが多かった。場合によっては他人の作った資料を渡されて、移動中にそれを読み、到着後すぐ本番ということもあった。その際も、中身をただ説明するのではなく、相手にとって最も望まれているもの、そして自分自身がぜひお勧めしたいことを素早く掴んで、そこを中心に語り掛けるようにした。それにより、プレゼンテーションはやらされているものではなく、自分自身の意思で相手にとって有効な情報をお伝えしている、納得のいく仕事に変わった。
自分の信念に従って行動する「高い志を持つ、市場価値の高い技術者」を育成します。
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コンサルティングと研修のサービスを提供します。
所長:石田厚子 技術士(情報工学部門)博士(工学)
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自分で考えた上での行動なら納得できる
2019.12.15