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恐るべし山寺


2019.11.10


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 毎年、11月初旬の連休前後に、一人旅をすることにしている。今年は、山形に1泊、仙台に1泊のホテルを取り、各々の土地の周辺を巡ることとした。山形から仙台までは仙山線を使い、その前後は新幹線を利用した。今年の目玉は、仙山線の旅である。

 連休も終わった平日の朝8時15分、山寺駅に到着した。山形駅から20分しかかからない。ここで、山寺(立石寺)を参拝するのが目的である。丁度1か月前にギックリ腰を発症し、その後、腰痛と脚の痛みに耐えながらリハビリを続けて来たのはこの日のためだった。通常の歩行は全く問題なく、スピードも以前と同じになった。しかし、階段の上り下りの訓練は間に合わなかった。その不安は的中した。まず駅から山の上のお堂(五大堂)を見上げたときにすっかりビビってしまった。駅の階段ですら手すりがないと不安なのに、あんな上まで上がれるのか。

 登山口から最初の根本中堂に来ただけでもう息が上がりそうだった。しかしここで帰るわけにはいかない。手すりがあればそれにすがり、なければ岩に手をついて必死で体を持ち上げて上り続けた。同じ電車で来た人達、下りてくる人達(バスツアーらしい)に道を譲り、本来ならこのくらいスイスイ登れるはずなんだが、と心の中で愚痴をこぼしながらただひたすら進んだ。そして、登り始めて40分後に、ようやく五大堂にたどり着いた。ここから見た景色の美しさは生涯忘れることはないだろう。でもそれにも増して、この1か月の苦しみを乗り越えてやり遂げたことの満足感は大きかった。

 下りは思いのほか楽だった。実は駅の階段は下りに不安があったのだが、いつの間にかかつてのバランス感覚を取り戻したようだ。驚いたのは、上がってくる高齢者の方々の数だった。杖を突いている人も多い。バスで乗り付けたらしい。健脚の高齢者は多いのだ。必死で登る人たちの横をスイスイ下りるのはちょっと申し訳なかった。

 15分ほどで山寺駅に戻ってきたら、今度は小学生の集団に出会った。低学年の子供たちが30人くらいいて、大はしゃぎしていた。体験学習なんだろうか。まさかあそこまで登るなんてことはないだろうな、などと気になってしかたがなかった。山寺駅から仙台方面の電車に乗ろうとしていたら、仙台から来た電車が入ってきた。何と、若者が沢山下りてくるではないか。平日でも高齢者、若者、小学生まで大賑わいの山寺「恐るべし」である。連休中は大層混雑したことだろう。それにしても、世の中には健脚の人が何と多いことだろう。私も負けてはいられない。スクワットでもして足腰を強化しなければ。

 さて、仙山線の旅の後半の目的地は作並である。山寺駅から快速電車に乗ったら、絶景とトンネルをノンストップで20分で走り抜けて到着した。ここでの目的地は、ニッカウヰスキー仙台工場宮城峡蒸留所である。平日でシャトルバスは無いため、30分ほど歩いてたどり着いた。平地を歩くのは何と楽なことか。蒸留所内を見学させてもらい、ウィスキーを試飲させてもらい、至福の時を過ごした。もちろん、駅までの戻りも歩いた。

 山寺は足腰のリハビリに良いようだ。もう、階段の上り下りに手すりは必要ない。



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