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女系5世代の違いとは


2019.08.11


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 家族だけで写真や動画を共有するSNSをしている。先日も可愛い動画がアップされた。歌を歌ったり、お絵かきをしたりしている幼子の周りを背後霊のようにうごめいている、やせこけた婆さんは私の母?祖母?そんな訳はない。私だ。そう気づくまでに一瞬時間がある。それだけ、今の私は母にも祖母にもよく似ている。年齢を重ねるにつれ、ますます同じに見えてくる。そして私に続くのは、2人の娘たちと2人の孫たち。全て女性である。

 祖母、母、私は顔がそっくりだが、後の2世代は(幸いなことに)今のところ全く違う。この生きてきた時代がばらけた女系5世代を比較してみると、色々なことが見えてくる。

 まずは、明治生まれの祖母と大正生まれの母の違いは寿命だろうか。祖母は東京オリンピックの年の春に67歳で亡くなった。母は95歳の今も健在である。この違いは医療の進歩もあるだろうが、第二次世界大戦を生き延びてきた生命力のお陰ではないか。私はそれに加えて栄養状態もよい時代に育ったので、100歳を超えるまで生きなければ申し訳ない。

 さて、祖母、母と私の間には大きな違いがある。専業主婦だったか仕事をしていたか、の違いである。祖母も母も、結婚してからは外での仕事はしていない。家を守ること、夫と子供の世話が自らの使命と考えて、その中で最大限の努力をしてきた。一方、昭和中期に生まれた私たちの世代はどうか。大半は母たちと同じ人生を歩んできている。私自身は特殊かもしれない。大学に行かせてもらえたし、子供を2人育てながら50年近く働き続けてきた。その間には、世界中を敵に回して戦っているような気分を味わったこともあったが、世の中の常識を打ち壊したいという思いをエネルギーにして、仕事と家庭の両立を図って来た。その背景にあるのは、仕事で成果を上げている祖父や父と比べてもそん色ない(頭の切れる)祖母や母が時々つぶやく「私も外で働きたかった」という言葉だった。

 一方、私と昭和後期生まれの娘たちの共通点は明らかである。仕事を持ち続けているということである。違いは、現代ではそれが非常識とは捉えられていないということだろうか。心の中で思っていることは別として、「女性は家庭を守るべき」と口に出して言えばセクハラ、マタハラ、パワハラと総攻撃を受けることだろう。この流れからすれば、平成後期生まれの孫たちの世代は、私が理想としていた「当たり前に仕事と家庭を両立する」ことが実現できているかもしれない。

 私は自分に対しては結構厳しく接してきたつもりだが、外部を攻撃すること、外部との摩擦を生むことを避けてきた。例えば、最初に企業に入った時、男性社員とは全く違った待遇だったし、女性は管理職には絶対になれないと宣告もされていたが、別に反発はしなかった。その時の心の中を知るのは難しいが、一つだけ思い当たることはある。「祖母、母の時代と自分の時代では明かに違いがある。なぜなら、私は男の人と同じ条件で大学に入り、学問をすることができている。時代はきっと変わってくる。その日のためにすべきことは、自分の力を高めること、自分を磨くことだ。」という思いである。

結局、その通りになっている。まだまだ時代は変わる。孫たちよ。力をつけてがんばれよ。



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