北千住駅(東京都足立区)にはJR常磐線、つくばエクスプレス、東京メトロ日比谷線、東武伊勢崎線、東京メトロ千代田線が乗り入れている。ルミネ側の改札口から下り方向を見たときに、一番左側に常磐線、その右隣りにつくばエクスプレスがある。私の頭の中ではこの順番がしっかりと刷り込まれていた。ある日、つくばエクスプレスの「八潮駅」が埼玉県であることを知って、天地がひっくり返るほどびっくりした。常磐線は、東京都、千葉県、茨城県を通っているが埼玉県は通っていない。なのに、なぜ右側を走るつくばエクスプレスは埼玉県を通るのか。八潮市というのは飛び地ではないか。慌ててGoogleさんに聞いてみたところ、何のことはなかった。つくばエクスプレスは北千住を出てまもなく地下にもぐる。その間に常磐線と交差して位置が逆になったのである。北に向かって常磐線が左、つくばエクスプレスが右と考えるとおかしいことは多々あった。松戸駅や柏駅とつくばエクスプレスの駅との位置関係など。そもそも常磐線で北に向かうとき、筑波山は左にある。感覚的に刷り込まれたら柔軟に変えられないのは老化現象か。
話は全く変わるが、セクハラ、パワハラの教育が企業や組織で行われるようになって大分経つ。私も企業を定年になって大学に移ってから5年間、アカハラ教育を毎年受けさせられた。現在ハラスメントと言われていることは、私が若い頃に当たり前に行われていたことである。しかし、当事者がそれを喜んで受け入れていたわけではない。トイレで泣いて我慢するか、寿退社というオブラートでくるんで辞めるかで何事もなく済んでいた。中には抵抗して声を上げる人もいたが、ほぼ「組織を乱す人」としてつぶされた。そのような社会で長年生きてきた人たちがハラスメント教育を受けたところで変わるとは思えない。だから政治家の失言は止まない。理屈と感覚は別である。団塊の世代が消滅の危機を迎える30年後まで待つしかない。何しろ世の中の長老たちは老化現象が進んでいるので、感覚的に刷り込まれたら柔軟に変えられないのだから。
しかし、感覚の中には、容易に変えられるものがあることに最近気づいた。それは「味覚」である。高血圧で血圧降下剤に頼っていたが、徹底的な塩分カットにより2年前から薬を飲まずに正常値を保つことができている。塩分の徹底的なカットはすなわち、味のないもの(不味いもの)を食べるということである。美味しいものには塩分、糖分、脂質は不可欠であるのは事実である。だしの素にも塩分はしっかり含まれているし、最近はやりの何にでも使えるお酢の成分を見れば、塩分、糖分がかなり含まれていることが分かる。しかし、味のない物には人の舌はすぐに慣れる。慣れれば外食が(塩辛すぎて)できなくなる。それまで食べていた菓子が甘すぎて食べられなくなる。幸いお腹がすけば味が無くとも美味しく感じられるものだ。豆腐に何もかけずに食べてみればその味が分かる。
ただし、味覚が容易に変えられるということは、ちょっとでも美味しい物を食べ始めるとすぐに戻ってしまうことを意味する。この柔軟性は生きていくために必要なものなのか。食事による健康管理は理屈では難しいということだけは事実である。
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所長:石田厚子 技術士(情報工学部門)博士(工学)
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感覚が理屈に勝ってしまうとき
2019.07.28