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気にすることは一つで十分


2019.06.09


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 最近、電車の中の広告が変わってきたように思う。かつては『週刊〇〇』や『週刊△△』のつり広告を目を凝らして読んだものだが、最近は見かけない。鉄道会社や路線によっては、空いているスペースがかなり見られる。鉄道会社の作ったマナー広告で埋め尽くされることも目立つようになった。最新の車両にあるデジタルサイネージ式の広告は同じパターンを繰り返し流すもので、どちらを見ても同じものが目に入って疲れる。

 そんな中、一年中気を吐いているのが「脱毛エステ」の広告である。「全身脱毛」の言葉があちこち飛び交っている。春夏秋冬、そんなに脱毛したいのか。毛が生えているのがそんなに嫌なのか。値段も100円から何万円まであって、どんなからくりがあるのかそちらの方が気になる。最近は男性の脱毛広告も目立つようになった。毛をはやしたい人がいる一方で脱毛したい人がいる。不思議な光景である。

 毎日通勤する必要が無くなったため、昼間テレビを観ることが多くなった。顔のシミ、シワ、たるみを改善(?)する化粧品の広告を嫌と言うほど見せられる。広告が多いということは、それだけ気にしている人が多いということだろう。肌はつるつるでムダ毛などなく、シワもシミもない肌。いくつになっても口角が上がって若く見える。おっと、人間そっくりのロボットを想像してしまった。そう言えば40代のころ、高い化粧品を通販で購入していた。何で止めたんだっけ。多分、かけたお金に見合うだけの効果がなかったからに違いない。それに懲りて、今は子供たちからどんなに酷い言われ方をしてもドラッグストアで買った安い化粧品をちびちび使っている。

 年を取ればシミだってシワだって増える一方なのだから、それをどう食い止めようとしても無理、と分かっていても少しでも遅らせたいと思うのは自然だ。鏡を見てはため息をつき、テレビのCMを見ては焦りを感じるというのも当然だ。若い人だって、ムダ毛のないつるつるした肌はきっと七難を隠すに違いない、と思うに決まっている。キャンペーン中ならちょっと試してみようか、と思う人がかなりの数いるからこそ、広告はどんどん増える。

 何かが気になりだしたら止まらない、というその気持ちは痛いほどよくわかる。なぜなら(ちょっと違った分野だが)私もそれを持っているからである。それは血圧である。毎朝血圧を測る。安定していれば一日明るい気持ちで過ごせる。しかし、少しでも上がると鬱になる。これだけ気を付けているのにまだ塩分を取りすぎているのか、何が悪かったのかと思い悩む。こんな数字ひとつでどうしてこうもかき乱されるのだろうか。これは相当のストレスである。血圧を測らなければならないことが血圧を上げる要因ではないか。血圧計など捨ててしまって楽になりたい。多分、ムダ毛に悩む人も、シミやシワに悩む人も同じなんだろうな。その他にも、美容や健康に関して気にする対象は沢山ある。そんなものは一人一つで十分である。多分、それが解決したら次の何かがすり寄ってくることだろう。

 もしも血圧を測らないで済むようになったら、私には次に必ず来るだろうというものがある。歯槽膿漏を予防する歯磨きである。あれを真面目にやると時間がかかるんだよね。



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