年に一度の家族旅行の行先が決まった。そこには以前から泊まってみたいと思っていたホテルがある。これは千載一遇のチャンスと提案してみた。しかし、家族はいい顔をしない。「ネットのコメントを見てごらん」と言う。読むうちに、やめた方がいいかな、と思い出した。自分ひとりであれば、「そんなに評判が悪いなら却って面白いじゃないか。泊まって確かめてみよう」という気持ちにもなるが、たまにしか会わない家族との旅行が残念なものになったら、と考えると二の足を踏んでしまう。結局諦めることにした。
逆のケースがある。1年半前から一人暮らしになった。4人家族から2人になり1人になっても食事を作って食べることに変わりはない。違うのは、自分のためだけに作る、ということである。健康で長生きするために、様々な実験をすることにした。いかにして塩分を少なくした料理にするか、いかにして食材を無駄なく使って常に野菜をたくさん食べられるようにするか、日々試行錯誤である。失敗しても自分で責任を取って我慢して食べる。飽きてきたら「これは体が求めていない」と判断して止める。例えば、市販のパンは塩分が多すぎるのでホームベーカリーで焼いているのだが、粉末の「おから」やごま、乾物などを練りこんで焼いて変化を楽しむ。ご飯を炊くときは、大量の玉ねぎと人参のみじん切りを一緒に炊き込み、小分けして冷凍して毎日茶碗一杯分ずつ食べる。お蔭で体調は良くなり、健康診断の結果も良好である。
これらは他人には勧めていない。まずい、と言われて終わりだろう。あくまでも自分自身の挑戦なのである。家族と一緒に食事をしていた頃は、食べてもらえないのを恐れて殆ど新しいものに挑戦しなかった。今のように評判のよいレシピが紹介されていたら取り入れたかもしれない。塩分や糖分やコレステロールには目をつぶり、「美味しい」と言ってもらえることを優先して。
挑戦を妨げる要因のひとつに「評判」があるように思う。大企業が新たなビジネスに乗り出す前につい他社の成功事例を探してしまうのも、大きな軌道修正を躊躇するのも、社外だけでなく社内の声を聴きすぎるからではないか。周りの意見を取り入れようとすればするほど、尖った案は丸くなり変革の意欲は削がれる。ベンチャー企業が挑戦できるのは、もともとゼロからの出発なら評判を気にすることはなく、そもそも口を出す人もいないからかもしれない。
挑戦するのなら、世の中が批判していることをあえてやってみることも考えるべきである。企業のトップも「失敗したら自分が全ての責任を取る」くらいの覚悟を持つ必要があるだろう。
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所長:石田厚子 技術士(情報工学部門)博士(工学)
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挑戦を妨げるもの
2016.12.18