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ラズベリーパイとiPhone


2019.03.31


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 大学の専任教授の定年である70歳を越えたので、居室も研究室も無くなった。そこで、『新しい仕事場』を作り、プログラミングやAIの技術などの勉強をすることにした。最近新しい玩具を見つけた。きっかけは、本屋で「RaspberryPi(ラズベリーパイ)ではじめる機械学習」というBlueBacksの本を見つけたことである。これで、LINUXとPythonと機械学習までも学べる。本を購入するとすぐにRaspberryPi 3B+のキットを(秋葉原に行くなんてとても私にはできないので)ネットで購入した。自宅の机の下に押し込んであったキーボードとマウスとテレビに繋いでいたHDMIケーブルを持って、『新しい仕事場』にでかけ、テレビとつないでOSをインストールして、あっという間に小さなコンピュータは動き出した。さあて、いよいよ本格的に勉強開始だ、と思ったら壁にぶつかった。

 『新しい仕事場』は私にとって自宅よりも快適な空間である。しかし、ここにはネットワークの環境が無いのだ。そんな所が現代に存在するのかと思われるかもしれないが、自分でネットワーク環境を作らない限り存在する。その費用がもったいないのでしていないだけである。でも、私はここでJavaやJava Scriptを使ってプログラミング(というよりダウンロード、インストール、展開、コピー)をしている。それは、iPhoneのテザリングを利用しているからである。契約している〇〇モバイルではテザリングは無料である。

 ところが、RaspberryPi(以降、ラズパイ)がiPhoneのテザリングでネット接続できないという問題が生じた。インターネット共有にしている私のiPhoneの信号をラズパイがキャッチしているのは確かのように見える。しかし、本来なら「”私の名前”のiPhone」と表示されるはずのネットワーク名が数字と”/”の繰り返しになっている。パスワードも受け付けられない。そこで、解決策を検索し、色々試してみた。挙句の果てに設定ファイルをいじくりまわして信号のキャッチすらできなくなり、OSの再インストールを行わざるを得なくなった。その時私が考えた結論は、その1:iPhoneが使えるソフトをラズパイにインストールしなければならない その2:インストールのためにはラズパイをインターネット接続しなければならない その3:接続のためにはiPhoneが使えなければならない ということで、このループからは永遠に抜け出せない、というものだった。ラズパイ一式を自宅に持ち帰って設定するか、『新しい仕事場』にwifi接続できる環境を作るかである。

 結論から言うと、問題はあっけなく解決した。冷静になって考えたとき、そもそもラズパイが「”私の名前”のiPhone」と表示できないのは日本語が分からないからではないか、と気づいた。そこで、iPhoneの設定で名前を半角英数字のみに変更してみた。すると、問題なくネット接続ができてしまった。後は、必要なソフトをどんどんインストールして、あっという間に日本語入力可能な開発環境が完成した。機械学習の勉強も進んでいる。

 安心したのもつかの間、私はとても恥ずかしい事実に気づいてしまった。これまで、私はiPhoneを通してあちこちで”私の名前”を垂れ流していたのだ。そして今朝、腰痛に悩んでいる。70の手習いは困難が伴う。でも問題が解決した時の喜びも大きい。



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