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サブスクリプションは話題のキーワードだが


2019.03.17


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 「何だ、いるんじゃないの。引っ越したかと思ったのに。また新聞取ってくれませんか?」その声を聞いたときの私の狼狽ぶりが恥ずかしい。明らかに私が悪い。嘘をついていたのだから。40年以上取っていた新聞を止める理由として、一番スムーズに受け入れられるのが『引っ越し』だと思い、つい電話でそう言ってしまったのだ。確かに10秒で止められたが、まさか確認に来るとは思わなかった。正直に「電子版に変える」と言えば良かった。

 最近よく聞くキーワードが『サブスクリプション』である。一言で言えば、定額でサービスが受けられることであり、「乗り放題」「聴き放題」「使い放題」などが売りになっている。でも、サービス・ビジネスとしては、「必要な分だけ、必要な期間サービスを受け、いやならいつでも止められる」のが特徴のXAAS(X as a service)はかなり前から浸透していた。クラウドサービスはまさにこれである。サブスクリプションの事例にはこれらに近いものも含まれている。一見新しいサービスのように見せているのだが、どこか違うところがあるのだろうか。それにしても、この言葉はちょっと気になる。

 サブスクリプションは本来「定期購読」「定期購入」の意味ではないか。それは昔からあるビジネスモデルである。新聞の定期購読、栄養食品やサプリの定期購入。それに、携帯電話の契約もよく似ている。それらに共通しているのは、「止めにくい」ということである。 「止めにくさ」には2つの要因がある。一つ目は、止めるのが面倒であることである。止める方法が分からず調べるのに手間がかかる、問い合わせや手続きの電話がつながりにくい、電話で説明するのに手間がかかる(多くの部門にたらい回しされる)、などがこれにあたる。二つ目は、止めると損するような気がすることである。解約(違約)金が必要、駅や本屋で買うと高い、単品で買うと割高、などである。これらによって、「まあ、メリットもあるのだからこのままでいいか」と継続してしまう。売り手の思う壺である。

 では、今話題のサブスクリプションはどこが違うのか。XAASの売り文句であった、「必要な分だけ、必要な期間サービスを受け、いやならいつでも止められる」は保証されているのか。定期購読や定期購入のデメリットである「止めにくさ」は解決しているのか。

 そもそも、サービスの提供者(売り手)から見れば、儲けるためには買い手を引き留めなければならない。正当なやり方であれば、サービスをより良くしていき、買い手のメリットを増大させることに注力すべきである。しかし、もしも、止めさせないことに努力を傾けるとすれば、止めるための敷居を高くする方向に走らないとも限らない。だからこそ買い手側はそれを見極める力が必要なのである。

 とはいえ、あまりに慎重になりすぎてチャンスを逃すのももったいない。例えば携帯電話の契約者の多くが大手キャリアから格安SIMに変えることを躊躇していると聞く。面倒さはコストパフォーマンスの良さを凌駕する。私は2年以上前に解約金を払って変えたが、月々の支払は半額になり、新しい機種に変えられ、「何でもっと早く変えなかったのか」と後悔するくらいお得になった。よいサービスが自由に選べる世の中になってほしい。



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