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簡素に生きるか豪華に行くか


2019.03.10


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 70歳代になって60歳代までと意識が変わってきた気がする。大きな変化は、高齢者をよく見る(観察する)ようになったことである。それまでは自分よりも若い世代、具体的には40歳代、50歳代が気になっていたのだが、何となく彼女たち(彼ら)は別世界の人間に見えてきた。自分の将来を考えるためにも高齢者をよく知らなければなるまい。

 お年寄りには、(当然ながら)太っているタイプと痩せているタイプがある。私は明らかに痩せているタイプである。これまでは、女性は年をとると太る傾向にあると思っていたのだが、よく観察してみると半々のようである。それにしては、売られている洋服のサイズは太目の人向きが多い。私は5号サイズだが、そんなものは若い人向けのショップか、デパートの小さいサイズコーナーにしかない。痩せた高齢者は声を上げなければ。

 もう一つのタイプ分けがある。地味に簡素に暮らす人たちと派手に豪華に暮らす人たちである。どちらが多いかは不明だが、後者に憧れる人が多いと世間は思っているようだ。頼みもしないのに送られてくるカタログ(洋服だけでなく、アクセサリーや高級かつらも含まれる)、豪華客船で世界一周、ビジネスクラスでの海外旅行などの広告の多さを見れば、「残りの人生を豪華に暮らしませんか」との誘いがビジネスに結びついているに違いないと感じさせる。一方で、できるだけ不要な物を捨て、シンプルに暮らすことを志向する動きがあることも事実である。個人の価値観と金銭的な制約条件によって、どちらを取るかが決まるのだろう。私は明らかに地味に簡素に暮らす派である。

 我が家のお雛様は、長女の初節句のお祝いに実家から贈られた7段飾りである。飾るのには半日はかかる。まずは、鉄骨を組まなければならない。そのために(今は不在の)子供部屋から思い鉄骨を引きずってくる。組み立てには力もいるし危険も伴う。それから、大箱2つのひな人形とお道具を押し入れから引きずり出してくる。片づけるときのことを考えて入っていた状況を保持しながら部屋いっぱいに並べ、それからひな壇に飾る。出来上がったときの達成感は一入である。しかし、昨年は苦労して飾ったにもかかわらず、娘たちも孫たちも訪ねて来ず、そのまま片づけるだけだった。雛あられは一人で食べた。

 今年のひな祭りは違う方法を考えた。お内裏様と三人官女だけをリビングに飾るということである。ひな壇をどうしようか、と悩んだ末、とても良いものに気づいた。娘が使っていたベッドの下の、引き出し式の収納ボックスである。下の引き出しを使って2段目を作り、緋毛氈をかけたら立派なひな壇になった。そこにお雛様を飾った。今年は孫たちも来てくれた。近くで眺めて、触って、はしゃぎまわって喜んでいた。いずれは、お道具の良い物だけ残して他の人形と鉄骨は処分してしまうことになるだろう。

 豪華客船で世界一周や、豪華列車の旅には食指が動かない。ぶらりと一人旅に出て温泉付きのビジネスホテルに泊まるのが楽しい。洋服はできるだけ安くて着やすいものを買い、1年で処分する。外食は塩分、糖分、コレステロールが気になるので基本的にしない。簡素化は頭を使うしストレスも軽減できるし良いと思う。個人的感想ではあるが。



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