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人間の複雑さはAIには超えられない


2019.01.13


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 2019年の始まりにあたって、100歳を超えるまで元気に活動し続けることを誓った。とはいえ、このまま漫然と過ごしていたら、歳をとるだけで何もできなくなる可能性がある。元気に活動するためには、まず体が動かなければならない。これについては、パワースーツの着用などでカバーできる可能性は高い。それでも無理になったら、介護ロボットを雇って助けてもらおう。移動はもちろん無人のタクシーが担ってくれる。遠方なら無人の空飛ぶタクシーを使えばよい。問題はそれに使えるお金があるかどうかである。というわけで、新年から財布の紐をきつく締めている。

 残る問題は知的活動である。我々もその子供たちの世代も一番心配しているのは「認知症」ではないか。体が動かせても考えることができなくなったら、行動の目的を見出すことができない。感情を無くしたら何の喜びも味わえない。失われていく脳の働きを補完してくれるものなど将来できるのだろうか。

考えてみたら、私は脳や感情の仕組みや働きを何も分かっていなかった。これでは100歳を超えるまで元気に活動するための準備ができないではないか。そこで、本屋に行って脳や感情に関する分かりやすい(ここが重要)本を探した。見つけたのは次の2冊のブルーバックスである。
@ 「こころ」はいかにして生まれるのか 〜最新脳科学で解き明かす「情動」〜
A もうひとつの脳 ニューロンを支配する陰の主役「グリア細胞」
これらを読み進むうち、人間の脳とは何と複雑であり分からないことが多いのか、と唖然としてしまった。人工知能(AI)が真似しようとしている脳の働きなどほんのわずかではないのか。しかもそれは「記憶」に偏っている。人間の活動は記憶だけで成り立っているものではない。さらに、体の働きが脳の働きに影響するという側面も重要である。

 脳の仕組みや働きが解明されたら、それをシミュレーションすることで人間と同じ働きをするAIが実現するだろうか。私は、それ以前に脳の仕組みや働きの解明は無理ではないかと思っている。なぜなら、解明は脳の中に手を入れなければできないからである。分からないものを触るくらい危険なことはない。AIに大量のデータを与えて学習させるなどとは比べ物にならない危険な行為をしなければならないのである。事実、私はこれらの本を読む中で、胸が悪くなることが多かった。人間では実験できないので、猿や犬やマウスの脳内に手を入れているのである。他者の命を使って研究しなければならないのは、普通の人間の感覚では耐えられない。

 抜群の記憶力と超高速の情報処理力、人間に似せたふるまいを持つAIが人間の仕事の多くを担う時代はすぐ来るかもしれない。しかし、人間はより複雑であり、未知の能力を持っている可能性は大きい。それはいつ発現するかわからない。全く新しい人類が生まれるかもしれない。などという壮大な初夢を見た気になった。そうだ。AIにおびえることなくうまく活用して、元気な100歳越えを目指そう。



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