上野駅の在来線ホームで列車を待っていたら、前に立っていた幼女にお母さんがグリーン車の説明をしていた。その際「お席が決まっていて必ず座れる」と言っていたので、ちょっと気になった。そう言えば3年ほど前に、私の娘が小さな孫を連れて移動するのにグリーン車に乗ることになり、ホームでグリーン券を買う際に「座席番号の指定のしかたがわからない」と騒いでいたことを思い出した。先日大学のゼミで新しい列車のアイディアを出していたとき、学生が「グリーン車ではエンターテインメントの画像などを観ることができるのではないか」と言っているのにも驚いた。グリーン車の座席なんてそんな豪華なものではないし、ラッシュ時には立っている人もいるし。多分、新幹線の『グランクラス』と間違えているのではないか。
それにしても「グリーン車」は一体いつからあったのだろう。かなり前からこの名前だったようにも思える。気になって調べたら、50年前の私が大学生のときに始まっていた。それまでは一等車、二等車だったのだ。昭和がどんどん遠くなる。なるほど、私が就職した頃にグリーン車が憧れの存在、何かのステータスシンボルだったことも頷ける。
就職してから結婚するまでの数年間、私は会社の女子寮に入っていた。そこは借り上げの寮だった。管理人は会社の社員だったが、ご年配の大家さんがおられ、寮の行事のときには必ず来られていた。だから、大家さんと(若い娘の)寮生の私たちは顔見知りになっていた。会社が休みの日、私は一人で東京に出かけることにして駅までのバスを待っていた。そこで大家さんと出会った。多分、東京に行くことを話したのだと思う。バスが駅に着いたとき、大家さんが「私はグリーン車に乗るので、一緒に乗りましょう」と仰った。断ることもできず私たちはグリーン車に乗り込んだ。「どれぐらいのお金がかかるんだろう」とビクビクしながら座っていると車掌さんが近づいてきた。大家さんはすぐに2人分の料金を払った。私は申し訳なさと、初めてグリーン車に乗ったことで、固まったままだった。
もう一つグリーン車に関わる思い出がある。就職して2年後ぐらいに、大学時代の同級生と共通の友達の結婚式に出席した。そのとき彼が「グリーン車に乗っている人は日経新聞を読んでいる。将来通勤でグリーン車に乗れるくらい出世するためには日経新聞を読まなければだめだ」。と言った。私はなぜかそれに納得してしまい、「出世=グリーン車=日経新聞」の図式が頭の中に出来上がってしまった。結婚してから一般紙に加えて日経新聞を取るようになった。結論から言うと、現在私はグリーン車に乗ることはできる。でも日経新聞を読まなくてもそうなったと思う。出世は全く関係なかった。
昨年、怪我のため1か月半ほど杖にすがって移動する生活が続いた。その時、通勤にグリーン車を使った。快適ではあったが、いつも「ああ、お金がもったいない。早く足が治って普通車に乗りたい」。とばかり考えていた。現在の私にとっては、グリーン車は高いステータスを示すものではなく、しかたなくお金を払って乗るものにすぎない。娘だって子供が増えたらワゴン車を買って、グリーン車など使わずに快適に移動している。
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所長:石田厚子 技術士(情報工学部門)博士(工学)
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グリーン車のステータス
2018.12.02