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先人の知恵の賞味期限


2018.11.04


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 私は目的や場所に合わせて5台のパソコンを使っている。最近そのうちの1台が、立ち上げるとすぐ(パスワードを入れる前)に「アプリケーションエラー」の表示を出すようになった。OKを押せば後は問題なく動くのだが、どうにも気持ちが悪い。そこで、エラーコードを使ってGoogleで検索してみた。案の定、というか予想通りというか、原因はすぐに判明した。フリーのセキュリティ(アンチウイルス)ソフトAをインストールしたからである。結局、仕事に影響しないのでそのままにしておくことにした。そのうちAかWindowsがバージョンアップされて自然と解決するだろうと思ったからである。というのは半分嘘で、解決策が見つからなかったからである。

 「ブロックチェーンの仕組みを理解しようと大学のPCに仮想環境を作り、ビットコインやイーサリアムを動かし始めてから入門書2冊の実行例を全て再現できるまで5か月もかかってしまった」と以前書いたが、この時も問題解決にGoogle検索は大いに役立った。そもそも参考にした書籍の1冊目の発行日は2年前であり、もう1冊は1年前である。例として挙げられている画面の例は現実に見ている物とは全く違う。例として示されているソフトウエアのバージョンは最新版とはかなりかけ離れている。書籍で示されているものと同じバージョンのソフトウエアをインストールしても、土台になるWindowsや仮想環境の方のバージョンも変わってしまっているので、教科書通りに動く方が奇跡のようなものである。ということで、同じことで悩んでいる人達の解決策を参考にしようと、検索を繰り返すことになったのである。確かに役立ったが、それは同時に迷走と落とし穴に嵌る原因も沢山作ってくれた。本音を言うと後者の方が多かった。

 困ったとき、迷った時に先人の知恵が役立つことは誰もが知っている。一般大衆も研究者も先人の知恵や成果を学び、役立ててきた。しかし、IT(情報技術)の世界ではもう一つ気を付けなければならないことがある。それは、先人の知恵の賞味期限である。半年前にできていたことができるとは限らない。1年前など問題外である。最近は、検索しても2か月以上前の情報は参考にしないことにしている。何もないときは、しかたなく半年前の情報も参考にするが、あくまでも参考で、それで解決すると信じ込みはしない。

 さきほど、ブロックチェーンの勉強のために入門書2冊の実行例を全て再現した、と書いたが、実際はすべきことの目的を、今使えるwindowsの環境とソフトウエアを組み合わせて実現した、というのが正しい。変化のスピードの速いIT時代の問題解決は、古い知識でモグラたたきのように一つ一つ潰していくことでは達成できない。真の問題を定めて、新しい知識で解決策を構築していく姿勢が必要である。そこで役に立つのは『直近の先人の知恵』である。賞味期限切れのものは却って落とし穴になる。

 さて、最初に述べた無料セキュリティソフトAでアプリケーションエラーの表示が出る問題をどうするか、である。ほんの一瞬イラッとするだけなので、解決するほどの問題ではない、としてしまおう。Aはやはり必要なものなので、悪しからず。



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