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パターン探しからの脱却


2016.11.13


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 学生にとって最重要課題は単位を落とさないことである。だから、定期試験の対策として過去に出題された問題や教員の出題傾向を研究する。受験や定期試験にはかなり有効な手段らしい。ただ、そのような努力はその場限りのものであり、将来の役には立たない。もしも、問題の意味を理解しそれを解くという行為を重ねていった上で解決のパターンを(探すのではなく)作り出すというのであれば別である。内容は忘れてしまっても考え方は体に染み込んでいくはずである。

 パターン探しは有効な場面が多いのも事実である。新入社員は周りの振る舞いからその行動パターンを見つけて真似することで組織に早くなじむことができる。仕事のやり方のパターンを知ってしまえば効率よく進められ、「できる人」と見なしてもらえる可能性も高くなる。上司の思考パターンを知ることで不要な摩擦を避けて良好な関係を持つこともできるかもしれない。

しかし、パターンに溺れると思考停止になることを忘れてはならない。まず、パターンを外れたことが起きるとどう対処して良いかわからなくなるという危険がある。このパターンしかない、と思い込んでもっとよいやり方を追求しなくなる可能性もある。それでは創造的な発想などできるはずもない。

パターン探しからの脱却を図るためには、まず、「なぜそうするのか」を考える必要がある。それは、それをすることのそもそもの意味、目的を探ることである。その上で、その目的を達成するために何をしたらよいか、を考える。さらに、それをする方法を考える。

マーケティングの研修などでよく出てくる「ドリルを買いに来た人が欲しいのはドリルではなく穴である」という話も、ここで止めてしまってはだめである。「なぜ穴が開けたいのか」を問うべきだろう。すると、壁に何かを掛けたいとか、覗きたい、とかの目的が分るはずである。さらに「なぜそれがしたいのか」とその先まで問うとよい。究極の目的を知ることによって、思いもよらなかった解決策が得られる可能性がある。

AI(人工知能)による問題解決は、パターンを統計的に解析してもっともありそうな解を導き出すものである。検索できる情報の量やスピード、統計的な処理能力からすれば、人間はAIには太刀打ちできない。一方で、解決のパターンを探すこと自体は高度ではあるが、AI自身が問題の意味を理解しているわけではない。やはりAIに伍して生き延びるためにはパターン探しからの脱却が不可欠だろう。



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